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タブーだった「サイド排気」のロータリーエンジン。OBの反対や米フォード・モーター(Ford Motor)の圧力を跳ねのけながら、田島誠司は見事開発に成功した。しかし商品化のめどは一向に立たない。失意の田島の元に1本の電話が…。

片渕昇
片渕昇
(写真:中山 司)

 正月休み明けの職場には不似合いなけたたましさで電話が鳴る。

 「はい、田島です」

 取り上げた受話器の向こうから、上村昭一の声が響いてきた。当時マツダの研究開発トップだったマーティン・リーチ(Martin Leach)常務の下で働いていた男である。

 「明けましておめでとうございます。どうでした、お休みは」

 「それどころじゃないですよ」

 「は?」

 「決まったんです」

 「は?」

 「常務のゴーサインが出たんですよ、Leach常務の」

 田島誠司の表情から、ようやく生気が漂い始めた。

 「新型ロータリー?」

 「そう」

 「商品化?」

 「そう」

 「ほんまに決まりか」

 「そうです。新しいロータリースポーツを出す。マツダのブランド構築にはどうしてもそれが必要ということでLeach常務が米国の本社に掛け合ってくれたそうで。手始めにコンセプトカーを今年の東京モーターショーに出します」

 「そうか、今年の」

 「ただし4ドア、それがLeach常務の結論です」

 「…そうか」