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4ドア・4シーターなんてスポーツカーじゃない。内の轟々(ごうごう)たる反論を押し切り、新型ロータリー・スポーツカーのプロジェクトが走り始めた。1999年の東京モーターショーに出展したコンセプトカー「RX-Evolv」も好評のうちに迎えられる。しかしこのクルマを、厳しい視線で見つめる男がいた。

前田育男
前田育男
(写真:滑 恵介)

 米国デトロイトの冬はいつもそう。2000年が明けて間もないその日も、空は厚い灰色の雲に覆われていた。

 しかし、ここコボ・ホールは別世界。北米国際自動車ショー(デトロイトショー)が開かれているその会場には、光が満ち、色が満ちていた。それが人を酔わせ、喧騒(けんそう)を生む。ブースから流れる音楽がそれを増幅し、一層の喧騒を生み出していく。

 その中に、ひときわ熱い視線を浴びる1台のコンセプトカーがあった。マツダが1999年秋の東京モーターショーに続いて出展した「RX-Evolv」である。説明員は誇らしげにその車体を指差し、来場者は一様に好奇のまなざしを向ける。その瞬間、好奇は羨望(せんぼう)に変わる。

 だが同じ会場に、周囲の熱気から抜け落ちたように、冷えた視線をたたえる1人の日本人がいた。

 「これか…」

 口元が心なしかゆがむ。

 「本当にこれでいいのか」

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