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高収益化支援家、弁理士 中村大介
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高収益化支援家、弁理士 中村大介

 「代わってもらっていいんだよ」。そう社員に温かい言葉を掛けたのはA社長でした。

 「温かい言葉」と書くといい雰囲気に感じるかもしれませんが、当時の状況は決していい雰囲気ではありませんでした。「代わってもいい」という言葉には、「辞めてもいい」という意味もありました。そうした意味も含んで温かい言葉を掛けたのです。

 少し説明を加えます。A社は技術戦略の策定を行っていました。会議室には、A社長と数人のA社の社員、そして、コンサルタントの私がいました。

 技術戦略の策定では定例的な会議が開催されます。そしてその度に、コンサルタントの私が進捗を報告するように「宿題」を出します。情報収集としてこんなことをしてほしい、すべきだという考え方の指導を含む内容です。

 技術戦略の策定において必要なことの1つに、情報収集の宿題があります。情報収集にはさまざまなものがありますが、この情報収集をするのは、慣れない人には骨の折れる作業になることがあります。

 宿題のクオリティーは人によって異なります。優秀な人は要領が分かっているので宿題が出された場合、要領よく対応します。一方、できない人はどうもピンとこない結果を出してくることが多いものです。

 コンサルタントは宿題を出して、その宿題を受け取る側です。結果が悪くてもクライアントの社員が一生懸命努力した結果なら受け入れられますが、そうではないことが分かると問題があると感じます。厳しい指導が必要なのではないかと感じますが、コンサルタントは第三者です。何か都合があるのかと忖度(そんたく)し、厳しい指導を遠慮してしまうことがあるものです。

 A社にはまさに、このような忖度が必要でした。宿題の出来上がりがあまり良くなかったのです。社員との人間関係を損なってまで厳しいことを言うのか、それとも忖度して社員の言い訳を尊重するのか。私はこうした判断に迫られていました。