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中村大介
中村大介
高収益化支援家、弁理士

 医療や保育、小売りなど、新型コロナウイルス禍にあっても社会的に必要性の高い業務に従事している皆様に最大の敬意を表します。また、読者の皆さんも影響を受けていない人はいないと思います。苦しい時期を耐えつつも、着実に業務を遂行しましょう。

 このような時期ですが、中・長期の技術戦略を立てたいという会社からの問い合わせが結構あります。そこで、今回から数回に分けて、実践的な技術戦略の立て方についての考え方を書いていきたいと思います。

 初回である今回は、体制面での重要ポイントについて書きます。結論を先に言うと、「良い技術戦略を立てるには、日常業務が最も大切だ」ということです。日常業務とは、良い研究開発テーマの創出です。どういうことかを簡単に説明しましょう。

 まず、体制の話の前に「戦略」について話します。戦略とは「やらないこと」を明確にすることだと言われます。そのため、戦略には取捨選択が必ず入ります。やるテーマとやらないテーマを明確にするという意味です。

 私は技術戦略の策定に関するコンサルティングをする前に、必ずクライアントの研究開発の現状を診断します。現状のやり方を把握するためです。

 ほとんどの場合、クライアントのやり方は、投資対効果を最大化するためにテーマを取捨選択するというものではありません。どのように取捨選択をしているかといえば、「現在できることかどうか」で取捨選択をしているという感じでしょうか。

 もっといえば、来年できるものはテーマとして技術戦略の俎上(そじょう)に載る一方で、足元では見通しがつかないものは深堀りの対象にならない、といった方が近いでしょう。検討の対象にならないというのは、深堀りするための時間をかけないという意味です。

 足元では見通しが立ちにくいテーマというのは、技術的に困難だったり、アイデアは良いものの市場が見えなかったりするものです。困難なものは解決の糸口が見えなければできませんから、当然といえば当然です。

本来はどうあるべきか

 しかし、こうしたテーマへの対応方法で差が付きます。大切なのは、解決の糸口を探すために深堀りするかどうか、です。良い技術戦略を立てられる会社であれば、自社内で技術的な困難に直面した場合に社外に技術を求めることがほとんどです。例えば、その技術に詳しい大学の先生を探し、選定して研究を委託するなど、時間とお金がかかりますがこうしたことを行います。

 一方、良い技術戦略を立てられない会社では、そうした時間や資金が用意されていない。そのため、動こうにも動けず、深堀りができない、ということになります。

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 通常、このような深堀りは技術戦略策定のプロジェクト内で行われるのではなく、普段の研究開発の中で行われています。高収益企業は普段の研究開発において深堀りができるため、技術戦略策定時に精度の高い情報が得られるのです。

 一方、一般的な企業では、技術戦略策定時(例えば年次の予算編成や、3年に1度の中期計画など)において、足元では見通しが立たないテーマに関する情報の精度が低く、そのため検討に値しない情報として取り扱われてしまいます。

 ここから得られる結論は、「検討に値する情報として取り扱われるためには、情報の精度を高めるしかない。そして、情報の精度を高めるのであれば、深堀りに時間と手間をかけるしかない」ということです。