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中村大介
中村大介
高収益化支援家、弁理士

 「飲みに行くな」「大声でしゃべるな」……。こんな言葉を耳にすることが増え、個人的には息苦しい世の中になっていると感じています。しかし同時に、「社会のデジタル化の整備」や「世の中が十年進んだ」といった言葉も聞かれ、前向きな変化の兆しも見えています。一長一短ですね。

 今回取り上げるのは、研究開発テーマの評価です。これを読めば、研究開発テーマの評価方法が実はシンプルで実務的であることを分かってもらえると思います。これまで評価する立場にいた人も、これから評価する立場になる人も単純明快に実践できる方法です。

 「研究開発テーマをどう評価するのか」「定性的なものを評価するのは難しい」という質問は、私が開催するセミナーでもよく寄せられます。詳しく聞いてみると、「評価がうまくいっていない」とか「評価に納得がいかない」などという話が出てきます。

 研究開発テーマの進捗管理手法である「ステージゲート法」では、テーマの「Go(継続)」か「Kill(停止)」かが判断されます。そのため、Killされたくないテーマオーナー(技術者)が自分のテーマを良く見せようとすることが想像できます。Killされれば自分の仕事がなくなってしまうからです。誰も失業はしたくないので必死になるのは当然です。技術者としては「なぜ分かってくれないんだ?」という思いがある一方で、経営者としては「分からないものに投資はできない」という思いがあります。

「投資は何倍になればよいか」に答えられない

 一般に投資は「もうかるから投資する」と考えがちです。しかし、実態としては「資金があるから使っている」という企業が少なくありません。

 どういうことかといえば、大企業ではある程度、研究開発予算が決められています。例えば「売り上げの○%」などといった基準があります。研究開発部門はその範囲でやり繰りする必要がありますが、ややもすると費用を全部支出してもよいという発想になりがちです。「そんなことがあるはずがない」と思われるかもしれませんが、現実にそうした企業は存在します。

 そこまでひどくはないにせよ、自社しか知らなければ、自社の投資が実は甘いという現実に気づく機会がありません。その証拠に、「研究開発投資は何倍になって戻ってくればよいか分かるでしょうか」と聞いても、多くの人が答えられません。

 答えられないのは2つの問題があるからです。1つは相場問題です。仮に100を投資すると考えると、当然100以上になって戻ってこなければなりません。しかし、何倍だと回答できる人は少ないと思います。というのは、こうした分野の相場があまり一般的ではないからです。

 もう1つは、決まった「物差し」がないという問題です。投資の世界では正味現在価値(Net Present Value;NPV)や内部収益率(Internal Rate of Return ;IRR)を使う方法が一般的だと思いますが、金利やキャッシュフローの見通しなどの作業を技術者に強いるのは酷です。そのため、研究開発投資ではNPVやIRRについての指標はあまり知られていません(実はExcelを使えば簡単なのですが)。

 つまり、「何倍だったら適正」という相場もなければ物差しもないため、研究開発投資の評価は難しいのです。そのため、「売り上げの○%」「技術者1人当たり△円」というコストの意味合いが強い評価尺度が世間では一般化しているというわけです。

 ただ、誤解を恐れずに言えば、こうした意味合いの評価尺度には意味がありません。なぜなら、経営者感覚に合わないからです。本来、投資であるべき研究開発費をコストと見ている点で本質を欠いていると言えます。では、どうすればよいのでしょうか。