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中村大介
中村大介
高収益化支援家、弁理士

 先日、若手技術者にオンライン研修を行っていました。その時、「新型コロナ後もテレワーク続けたいですか」と聞いたところ、「続けたい」との意見がなんと9割を占めました。訳を尋ねると、「子育てと仕事の両立には不可欠」「業務効率が圧倒的に良い」といった業務上の理由もあれば、「出勤しなくて楽だから」という意見もありました。彼らの回答から私が感じたのは、「若い人は合理的である」ということでした。

 私には「会社には行くのは当たり前だ」という固定観念があります。通勤していた期間が長かった世代には、同様の感覚があるのではないでしょうか。新型コロナ後は、こうした固定観念が勝つのか、それとも合理性が勝つのか、会社によって判断が分かれそうです。

 今回のコラムでは、技術マーケティングを取り上げます。ここでも、固定観念で従来通りやっていくのか、それとも合理的に革新していくのかが問われます。当然、固定観念にとらわれた技術戦略から脱し、合理的に革新していけば、顧客からの引き合いが倍増するような活動を進めていくことができます。

精肉店が繁盛する理由とは

 固定観念にとらわれることなく合理的に革新した事例を1つ挙げましょう。精肉店の事例です。知人から聞いた話でデータなどの検証はできないのですが、皆さんにも参考になると思います。

 精肉店には、たくさんの固定観念があります。その1つが商品表示です。精肉店の商品表示といえば、牛肉や豚肉、鶏肉といった動物の種類や、バラやヒレ、ロースなどの部位という属性が使われます。実はこれ、固定観念により「こう表示するもの」と思い込んで長年変えていなかった(変えることを思いつかなかった)ものだそうです。

 そこである時、思い切って合理的に革新してみたらどうなったか……。なんと売り上げが2倍になったケースもあるというのです。そのため、多くの精肉店がこの革新手法を取り入れて、今では一般的になりつつあると聞きました。

 では、どのような革新手法を使ったのか。肉を厚く切ったものを「焼き肉用」として販売したり、サイコロ状にしたものを「カレー用」として販売したりする方法です。

 「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれません。しかし、本当にたったそれだけで売り上げが2倍になった例があるのです。ただ、数十年前の話なので、この手法は知れ渡り、今では一般的になっているといいます。

(作成:筆者)
(作成:筆者)
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 皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。スーパーに行けば「焼き肉用」や「カレー用」の肉が置いてあります。この表示に変えるだけで売り上げが2倍になるのですから、効力の大きさが分かります。

技術マーケティングへの応用

 製造業には全く関係がないように思えるかもしれません。しかし、実はこの精肉店の事例は、技術マーケティングにも応用できます。同じようなことが研究開発の世界でも起こるからです。

 どういうことか、米3M(スリーエム)の事例を使って説明しましょう。3Mは、Minnesota Mining and Manufacturingの名が表す通り、鉱山や製造業の技術から発展し、現在ではさまざまな技術を保有しています。

 そのうちの1つにフィルム技術があります。フィルムとは薄い樹脂の膜です。多層にすることで光の屈折を制御するなどの機能を発揮します。また、表面処理技術もあります。表面処理とは、表面に凹凸形状を付けることです。これにより、接着力の向上や光の反射などの機能性を持たせることができます。

 これらの技術を、これまでの固定観念では「フィルム技術」や「表面処理技術」と捉えます。精肉店で例えると、「バラ肉」や「ロース」などの部位で呼んでいるようなものです。

 今、固定観念と書きましたが、技術を正確に言い表しているので、これはこれで必要です。筆者も不要だとは思いません。しかし、精肉店と同じように売り上げを増やせるなら、ぜひそうしたいものです。そのためには革新手法が必要になります。

 3Mでは、これらの技術をどのように説明しているのでしょうか。