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中村 大介
中村 大介
高収益化支援家、弁理士

 「最後の手段は人の入れ替えですね」と冷静にかみしめるような表情でつぶやいたのはA社の社長です。変わらない経営幹部たちにフラストレーションを感じているようでもありました。「人の入れ替え……。やはり最後はそこか」と私は社長の覚悟を感じました。

 この会議が行われたのは数年前の秋、ちょうど来期予算を考える頃でした。来期予算といえば、来期の会社の業務を決めて予算を割り振ることです。翌年の会社業務の大枠が決まります。

 A社のコンサルタントである私は、この半年以上前から社長が意思決定できるように準備をしていました。どういうことかといえば、A社では、既存業務の利益率の低さから事業の大規模な見直しが必要だったのです。

 しかし、従来の「積み上げ型」の予算策定プロセスでは見直しができませんでした。積み上げ型とは、部門から来年度の計画を出させ、それらの計画を積み上げて経営が調整・承認するものです。

「積み上げ型」の予算策定プロセス
「積み上げ型」の予算策定プロセス
(作成:筆者)
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 それもそのはず。事業部門は顧客からの要望を受けて商品を開発すれば売り上げが上がるという論理で動いており、来年度も顧客の要望を受けて商品開発をしようという計画を立てていました。

 一般に、顧客の要望に過度に追従した商品開発はデメリットが多いものです。例えば、商品ラインアップの広がりや在庫の増加、管理の不行き届き、品質問題などが起きる可能性が高くなります。A社も例外ではありませんでした。

 「きちんと研究開発できる会社になりたい」という社長の願いから、私は研究開発テーマ(以下、テーマ)の棚卸しに着手することにしました。各部門の提案するテーマを可視化することで、「これをやることで儲(もう)かるのか否か」を明確にしたのです。