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高収益化支援家、弁理士 中村大介
高収益化支援家、弁理士 中村大介
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 今回のコラムは経営者的なリソース配分の話です。面白い商品や事業を生み出すのに、優秀な経営者はどのように発想し、行動に移すのかについて解説していきます。画期的な商品を生み出す経営者と、生み出せない経営者の相違点とは何なのか見ていきましょう。

 今日の主人公はA社長、とある上場企業の社長です。上場企業は昨今、特に業績の向上が求められており、新規事業への関心が高まっています。A社長もそんな新規事業に関心を寄せる経営者の一人です。

 このテーマでコラムを書こうと思ったのには理由があります。それは、A社長と話をしている時に、「A社長も誤解してるな」と思ったからです。経営者にその誤解があると新規事業はうまくいきません。しかし、当然ですが、A社長は新規事業をうまくいかせたいと思っていました。この誤解は本当によくあることなのですが、思っていた以上に多くの人が誤解しているようなのでコラムに書きたいと思いました。

 A社長との会話を振り返ると次のような状況でした。A社の経営目標は「2030年に営業利益◯◯円にする」というもので、今の利益水準の約2倍です。達成するためには既存事業の利益率を高めるとともに、利益率の高い新規事業を複数立ち上げなければなりませんでした。

 新規事業を立ち上げるときによくあるのが、「新規事業開発部門をつくろう」というものです。A社でも同様の取り組みをしようとしていました。

 私はA社に呼ばれて、経営者向けに「成功する新規事業への取り組み方・動向」と称したプレゼンをすることになりました。そこでA社長と話をする機会があったというわけです。

(作成:筆者)
(作成:筆者)
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A社長のやろうとすることとは

 私が一通りプレゼンをした後に、質疑応答の時間がありました。その際、最初に質問をしたのがA社長です。「新規事業部門をつくろうと思っていますが、どう思いますか」という質問でした。

 「とても良い取り組みだと思います」と肯定的に返した後に、私はいくつかの実践上の注意点を付け加えました。その部門の規模感や予算感、検討するテーマ、どんな人を当てるべきか、などについてです。

 その注意点を聞いたA社長は、半分安心し、半分驚いていました。A社長が驚いたのは、新規事業部門にどんな人を当てるべきか、という点です。

 私は、「上司とそりが合わないことが原因で人事評価が低くなったような人を当ててください」と強調したのです。A社長は「え?」と、とても驚いていました。その反応から、A社長のイメージとはまるで違っていたのだと想像できました。

 A社長に「どういう人物をイメージしていますか」と聞いたところ、予想外の質問だったのか一瞬言葉に詰まり、その後しばらくして、「評価の高い、エース級の人」という答えが返ってきました。

 A社長に対する私の返答を紹介する前に、「エース」についての私の考えを書きます。エースというのは既存のルールの中で1番という意味です。1番というのは悪くないのですが、「既存ルールの範囲内で」という前提がつきます。

 新規事業は別のゲームです。しかも、新規事業をつくるというのは、ゲームをプレーする側ではなく、ルールをつくる側になるのです。そのため、定められたルールで1番というのはあまり関係ないと私は思います。そのため、私は次のように返しました。

 「新規事業部門に向いている人のイメージは、学生時代で言えば、受験勉強で優秀な子ではなくて、海外のダンススクールに行くような子ですよ」と。