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高収益化支援家、弁理士 中村大介
高収益化支援家、弁理士 中村大介
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 今日のコラムでは、R&D(研究開発)の変革をやり遂げる会社とやり遂げない会社の相違点について説明します。このコラムを読んでいる皆さんの中にはR&Dに取り組んでいる人も多いと思いますが、自社の変革について「どうもうちの会社は遅いな」とか「全然変わらないな」という感想を持っている人もいるのではないでしょうか。今回はそうした違和感の正体とは何なのかについて迫ってみます。うまくいっていない原因をつかみ、改善の処方箋まで手にすることができるはずです。

(作成:日経クロステック)
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 まずはこのテーマで書こうと思ったきっかけを説明します。筆者はR&D変革のコンサルタントなので、日常的にR&D変革の相談に乗っています。以前は「技術の棚卸し」や「テーマ創出」などの手法に関する相談が多かったのですが、最近多いのはR&Dの変革に関する相談です。

 非常に多くの会社から「R&Dの変革に取り組んでいるが、結果が出ない」という相談を受けます。そうした相談を受けると、筆者はコンサルタントとして取り組んだ内容や背景について話を聞きます。そうした話を聞く中で、うまくいかない会社にはある共通項があることに気づきました。

 その共通項とは「しかるべき体制を取っていない」ことです。しかるべき体制とは、目的としているR&D変革を実現できる組織体制のことです。この体制を取らずにコンサルを進めてもうまくいきません。R&D変革を本気で実現しようと思っているのであれば、R&D変革を実現できる組織体制を取るように強く勧めます。

 体制を取れば、R&D変革はうまくいきます。しかし、相談時に話を聞いていると体制を取らずに変革しようとしている会社が多いことに気づきました。どういうことかを以下に詳述します。

うまくいかない会社はトップの顔が見えづらい

 コンサルタント目線でその原因、つまり変革できない会社の特徴を一言で言うと、「トップの顔が見えない」となります。誰が決めているのか分からないのです。

 例えば、R&D変革のためのコンサルティングを行うとしましょう。コンサルの現場にトップが出てこないのです。出てきても冒頭の挨拶のみですぐに帰ってしまう……。残された現場は変革の企画を練るのですが、トップの関心が薄いことを知っているので、モチベーションも上がりません。

 トップの顔が見えないことの悪影響は現場のモチベーションだけではありません。より悪影響が大きいのは優先順位の調整ができないことです。優先順位について、どういうことかを分かりやすく説明しましょう。

 分かりやすくするために、R&D変革を受験に例えてみます。R&D変革は一時期に集中してやりきるものです。その意味では受験に似ています。受験に成功するには、一時期集中しなければいけません。

 受験には失敗する子もいるわけです。どのような原因で失敗するかといえば、例えば恋愛も考えられるでしょう。受験と恋愛のどちらかに集中せずに「受験も恋愛も」となってしまう。その結果、不合格になります。

 R&D変革もこれと同じです。R&D変革の場合、恋愛に当たるのが既存業務です。どっちつかずで「R&D変革も既存業務も」となってしまえば変革はうまくいかない、というわけです。

 変革の現場では、できる限り効果を優先したいもの。「R&D変革も既存業務も」となれば、どっちつかずになって結果は出ません。現場は常に「R&D変革か既存業務か」の優先順位を付けていかなければなりません。要するに、既存業務の優先順位を下げてでもR&D変革を実行したいのです。

 こうした優先順位付けは、トップしかできません。しかし、関心が薄いため関与してもらえない。そんなトップでも力を持っているため、現場からは「優先順位付けが必要」とは言いにくい雰囲気がある。そんな状況で優先順位付けができずに変革が頓挫しているケースは数多くあります。

変革できる会社ではどうなっているか

 一方、変革できる会社は、トップの顔が見えます。変革の実効性にコミットするのはあくまでもトップです。そのため、変革の現場に強い関心を持っていて、会議の冒頭挨拶だけをして帰ったりはしません。

(作成:筆者)
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 変革の現場に強い関心を持つというのはどういうことかといえば、マイクロマネジメントという意味ではありません。変革実施時に起こる現場での問題を解決することを指します。

 R&Dの変革をする際、ほぼ必ず既存業務を通常通りにはできなくなります。例えば開発テーマを止める場合、そのテーマに関係する社内関係者の処遇や顧客への影響にどのように対処するのかを決める必要がありますが、現場だけでは調整が難しいのです。

 そうしたときにトップがいるといないとでは大違いなのです。いればその場で解決できます。仮にいなかったとしても、トップが関心を持っていることを現場が知っていれば、問題を報告して対処を相談できるというわけです。そのため、トップが重大な関心を持っていれば、変革の現場では思い切り改革案を推進できます。

 逆にトップが関心を持っていないとどうなるでしょうか。現場は報告もせずに、「やったふり」をせざるを得ないのです。「やったふり」とは、例えばステージゲート制度を創設するというもの。「ステージゲートができました」と言えばやったように聞こえますが、制度ができたからといって効果は出ません。結果として、効果が出ないで終わるのです。