楽天は自社の従業員の働き方改革にもテクノロジーを積極的に生かす。全世界の人事評価基準を統一したうえで人事システムを刷新。PC業務の自動化も進めてホワイトカラーの生産性を高め、筋肉質な組織作りを目指す。
楽天は2020年以降、全世界の人事評価基準を統一する。準備として「どこでどういう人材が働いているかを19年中に見える化する」(社内ITを率いる田中かおる執行役員コーポレート情報技術部ジェネラルマネージャー)。
一連の施策の土台になるのが人事システムだ。楽天は米ワークデイのクラウドサービスを使い、18年7月に同システムを刷新した。従来は欧州SAPが買収したサクセスファクターズなどのサービスを使っていた。
仕事や評価の基準を統一
まずは仕事の難易度などを指す「ジョブレベル」を定義することを目指す。ジョブレベルをグローバルで統一できれば、適材適所の人材配置につなげられる。現状は入社年次や評価、給与など社員の基本情報が見られる程度にとどまる。
例えば日本で働くインド人技術者が家族の事情で母国に帰ることになった場合、ジョブレベルを統一できていれば、現地の拠点で仕事を続けやすい。仕事の内容や評価基準を明確にできるからだ。楽天では世界70カ国・地域以上から人材が集まっており、ジョブレベルを統一するメリットは大きい。
次々に新たな事業が立ち上がる楽天にとって、臨機応変の人材配置は欠かせない。19年10月に参入する携帯電話事業関連でも、「3日間で200人を動かす」といったケースがあったという。田中執行役員は現状の仕組みを基に、「より戦略的な人材活用を可能にするタレントマネジメントに進化させたい」と力を込める。
SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージのサポート切れに伴う「2025年問題」を回避するため、会計システムの刷新も検討している。同システムの刷新に合わせて「国や事業といった切り口で自由に財務情報が見られる仕組みを作りたい」(田中執行役員)。
田中執行役員は社内業務の効率化にも力を入れている。代表例が定型業務を自動化する「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の導入だ。
RPAで100ロボット展開
楽天は18年4月からRPAの導入を本格的に始め、自動化プログラムのソフトウエアロボットを18年中に約100体開発した。人手に頼っていた業務を自動化し、月間1000時間ほどを削減できたという。
田中執行役員によれば、楽天社内で生まれる新組織は1カ月当たり100~400にも上る。これまで人事異動の登録業務は人手に頼っていたが、RPAで自動化した。