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フロントシートの下に空間を見付けたフィットの開発チーム。燃料タンクをセンターレイアウトとし、多彩なシートアレンジを可能にするアイデアを思い付く。これを目玉とし、自信満々で社内評価会に臨んだ面々。だが、彼らに浴びせられたのは「こんなひどいチーム、見たことない」という叱責(しっせき)の声だった。

左から岩城慎氏、恵美幸夫氏、山岸政彦氏
左から岩城慎氏、恵美幸夫氏、山岸政彦氏
(写真:栗原克己)
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「なあ、このホテル知ってるか」

「はい?」

「インスパイアの直列5気筒エンジンを開発した時にも使ったホテルだよ。縁起がいいぞ、ここは」

 初めての社内評価は、説明に立ったプロジェクトを統括する松本宜之が火だるまになるという散々の結果に終わった。指摘されたのは、燃費対策など基本部分の弱さ。自信たっぷりに空間利用の利点を説く以前の問題だった。

 そこで、松本に1つの課題が与えられる。なぜ「シビック」は世界的に認められたのか。それをもう一度考えてみろ、というのだ。

「どうして売れたんだって言われてもなぁ…」

 逡巡(しゅんじゅん)する松本たちに手を差し伸べたのは、デザイン担当とエンジン担当の役員たちだった。中禅寺湖畔にあるホテルを使い、泊り込みで検討会を開こうというのだ。