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人が潰れる外的要因

 内的要因を持つ部下に外的要因が加わると、より潰れやすくなってしまう。部下が潰れる外的要因には、大きく以下の3つが考えられる。

  • 周囲との関係性が悪い
  • 仕事の質と量が適切ではない
  • 成功体験などの精神的充足を感じる機会がない

 3つの中で最も大きな要因が、周囲との関係性だ。これは、リーダーと部下の人間関係やチーム内の人間関係のことを指す。人間関係が良くないIT現場では、本人が手掛けた仕事に対してネガティブなフィードバックがかかり続ける。

リーダーの責任で部下が潰れる3つの要因
リーダーの責任で部下が潰れる3つの要因
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 例えば、部下に対して「長い経験があるのだから、もっと早くできたんじゃないか」「Aさんだったらこんな設計ミスはしない」といった否定的な意見を投げかけてはいないだろうか。深い信頼関係を築いた上でのフィードバックなら、部下を奮起させることになるかもしれない。しかし、配属されたばかりで信頼関係もない新リーダーから駄目出しが続けば、部下は自信をなくして精神的に追い詰められるだろう。

 他者に関心がなく、互いをケアするという発想がないチームも部下を潰す要因だ。特にIT現場のように個々のタスクが明確に定義されている職場は、人間関係よりもタスク重視になる傾向がある。明らかに困っている部下に対して、チーム内の誰からも助けがない状態が続けば、部下のパフォーマンスは低下するだろう。

適性に合わない仕事を任せてしまう

 部下の適性に合わない仕事を任せても、やりがいを感じられない。成果は出にくくなり、部下が自信を喪失するきっかけとなる。これが2つ目の外的要因である。ITエンジニアには、企画が好きなタイプもいれば、美しいプログラムを書くことが好きなタイプもいる。

 AI(人工知能)を用いて新しいシステムを設計したいという部下に、COBOLシステムのメンテナンス作業を割り振っても、やりがいは感じてもらえないだろう。部下に任せる仕事の質が適切でなければ、部下にとっては大きなストレスとなる。

 何かと長時間労働、不規則な勤務時間になりがちなIT現場であるが、過度な仕事量も大きなストレス要因となる。集中力の低下によるミスや思考力の低下、モチベーションの低下を引き起こす。これにより、部下が負のサイクルに陥ってしまう。

 成功体験など仕事における精神的充足感を感じる機会が少なければ、仕事に前向きに取り組む気持ちを持てなくなる。これが3つ目の外的要因である。例えば、自身の作業の遅延によりスケジュール通りに顧客のシステムをカットオーバーできなければ、達成感は得られない。自身が行っていることへの自信が得られず、精神的に落ち込んでしまう負のサイクルに陥りやすくなる。

 ⼀⽅、適切な目標設定などにより、仕事がうまくいった経験をすれば、次も頑張ろうというモチベーションにつながる。あるいは自身のやったことが誰かに感謝されるなど、自身の存在意義を感じるような機会が⼗分にあれば、ネガティブな出来事があっても、それをはね返せるようになる。

 潰れた部下を元気にするには、ここで挙げた3つの外的要因を解消すること肝要だ。内的要因は本⼈の性格や資質に起因する部分であり、外部からのアプローチは難易度が高い。しかし、外的要因は工夫次第で解消でき、部下の力を引き出すことができる。リーダーは、今いるメンバーをよく見て、戦略を立てたい。

野本 明日香(のもと あすか)
JTBコミュニケーションデザイン コンサルタント ワーク・モチベーション研究所 主任研究員
ワーク・モチベーションを基軸とした人事コンサルタント。組織開発/人材開発を中心としたプログラムの開発や実施により、これまで700以上の組織を支援してきた。著書に「たった5つでモチベがあがる技術」(日経BP社)ほか多数ある。