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 ランサムウエア攻撃などのサイバー犯罪が後を絶たない。違法行為であるにもかかわらず、若年層の中にはサイバー犯罪者になりたがる人が少なくないといわれている。もしそんな人が身近にいたら忠告してほしい。サイバー犯罪は決してエキサイティングなものではなく、とても「退屈な職業」であるということを。英ケンブリッジ大学などの研究者が論文で明らかにした。

サイバー犯罪に憧れる若年層

 「サイバー犯罪者」というとどんなイメージなのだろうか。卓越した技術により大企業のネットワークに侵入し、機密情報を盗み出して巨額の金銭を得る――。報道や創作物の影響によって、このような「ダークヒーロー」をイメージする人は少なくないだろう。

 大きな被害をもたらしたサイバー犯罪者が逮捕されると、司法当局は自らの手柄を誇示するために、逮捕までの苦労や攻撃の巧みさなどを強調する。メディアは許されない犯罪であること、罪が重いことなどを伝える。

 だが反抗心に満ちて、サイバー犯罪を「エキサイティングな職業」だと思っている若年層には逆効果であり、かえってその世界への憧れを強くさせてしまう。

 そこでケンブリッジ大学や英ストラスクライド大学などの研究者は、サイバー犯罪者の実情を明らかにすることで、若年層がサイバー犯罪者に憧れることを防ごうと考えた。

 研究者らはサイバー犯罪者コミュニティーの書き込みやサイバー犯罪者へのインタビューなどを通じて、サイバー犯罪の実態を調べた。その結果、サイバー犯罪の多くはひどく退屈であり、多数のサイバー犯罪者が燃え尽き症候群になっていることが明らかとなった。

 研究成果は「Cybercrime is(often)boring;maintaining the infrastructure of cybercrime economies」という論文にまとめられ、インターネットで公開されている。今回はこの論文をひもとこう。

サイバー犯罪は1つの産業を形成

 論文はサイバー犯罪に関する多数の論文を引用して、サイバー犯罪の変遷を解説している。サイバー犯罪者が「ハッカー」と混同されていた20年以上前は、サイバー犯罪にはエキサイティングな側面があったとしている。

 当初サイバー犯罪者は「世間に反抗的で高度なスキルを持ち、現代社会に脅威をもたらす一匹おおかみ」といったふうにメディアによって「ロマンチック化」されていたという。現在でもそのようなイメージを持っている人はいるだろう。