一昔前なら、メールサーバーやメールソフトの不具合により特定のメールだけが送れないといったことは珍しくなかった。
だが現在ではメールの信頼性が高まり、そういったことはめったにない。もちろんメールサーバーがダウンしてすべてのメールを送れないということはあるが、「ほかのメールは送れているのに、特定の1通だけが送れない」ということはないだろう。
もしこのような状況になってエラーメールも返ってこなければ、送信側では送れていないことが分からない。送ったつもりになっている。受信側でも送られたことは当然分からない。この「特定の1通」が重要なメールだった場合、大変な事態に発展する恐れがある。
実際、筆者が所属する日経NETWORK編集部では、大事なファイルを添付した特定のメールだけがやりとりできなくなり、大変な思いをさせられた。原因は、メールに添付したPDFファイルの記事だった。PDFファイル中の文字が原因でメールを送れなかった。悪夢のような出来事の一部始終を紹介しよう。
クラウドメールで記事をやりとり
まずは状況を分かりやすくするために、日経NETWORK編集部がどのようにして記事を作っているのかを簡単に紹介しよう。なお記事の作り方や用語などは出版社や編集部によって異なるので、あくまでも当編集部のローカルルールだと思ってほしい。
記事を書くのは編集部の記者だが、雑誌に掲載する記事の形にしてくれるのは制作スタッフだ。記者が制作スタッフに原稿を送ると、制作スタッフが掲載記事の形にして記者に返送する。
最初に送られてくる記事は「初校」と呼んでいる。記者は初校をチェックして、必要があれば制作スタッフに修正を依頼する。制作スタッフはその修正を反映させた「再校」を作って記者に戻す。
以降、修正すべき点がなくなるまで同様のやりとりを繰り返す。日経NETWORKでは、再校の次を「最終校」、その次を「念校」と呼んでいる。念校から先は「念校2」「念校3」と数字を増やしていく。
以前はもちろん紙だったが、現在では初校以降をPDFファイルにしてやりとりしている。記者と制作スタッフはクラウドメールサービスを利用して、メールでPDFファイルを送受信する。