7年ぶりの日本人、多数派を占める営業系出身者に対してSE出身と、日本IBMの山口明夫社長は単なる新社長以上の注目を集める。顧客企業と米本社の強い期待に応える使命を負うが、当人に気負いはなく、重責にも「トップの仕事は楽しい」とマイペースで臨む。多数のIT企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業の強化を急ぐ中、武器と頼むのは多様な人材と技術だ。GAFAに押され気味の古豪・米IBMを日本から変え、再び成長路線に導けるか。巻き返しの一手を聞いた。
(聞き手は大和田 尚孝=日経クロステックIT編集長、山端 宏実=日経クロステック/日経コンピュータ)
日本人の社長は4代前の橋本孝之氏以来、7年ぶりです。
私個人としては日本人かどうかは正直、あまり意識していません。IT(事業)はグローバルで物事を考えながら、日本やお客様の事情も理解し、判断を下さなければなりませんので。米本社も「あなたは日本市場のリーダーなんだから、やりたいことをしっかりやればいい」と言ってくれています。
とはいえ、社員との距離は近くなっていますね。日本語でコミュニケーションがとれますし、様々な背景を説明する必要がありませんから。
社員にとっては、ごまかしがきかないところもあると思います。私自身、お客様との接点がたくさんあるので「むしろ厳しくなった」と感じている社員もいるでしょう。
顧客企業の反応はどうですか。
「IBMのやっていることや思っていることがすごく分かりやすくなった」と言ってくれています。米本社とも関係が遠くなっているわけではなく、よく会話をしています。3カ月に1度は向こうの経営会議に出向いていますし、それ以外でも色々話をしています。
米本社の幹部は頻繁に日本に来てくれます。先日もIBMリサーチのディレクターで、基礎研究の責任者であるダリオ・ギルが来日しました。