GMOインターネットは2020年1月、新型コロナウイルス感染症対策で在宅勤務を導入した。大手企業の中でいち早い決断だった。事業継続に向けた準備と訓練が奏功し、業務生産性はほとんど下がっていないという。世界的な災禍の半面、従来の非効率を見直しITによる変革を促す好機にすべきと訴える。
(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、玉置 亮太=日経クロステック/日経コンピュータ)
2020年1月27日、東京都などで勤務する従業員約4000人を対象に在宅勤務へといち早く切り替えました。
当社グループ全体では約6000人、うち東京と大阪、福岡に合計で約4000人が働いています。私たちの規模の会社では日本で初めて在宅勤務体制に移行したと聞きました。早期に決断できた理由の1つは、日ごろからの準備と訓練です。パンデミックや自然災害など、事業継続の難しい状況を想定し準備していました。
もう1つの理由は、組織の習慣とコミュニケーションの貯金です。我々は社是や社訓に当たる「スピリットベンチャー宣言」を1995年に定めました。組織運営に関するノウハウや心構えを詰め込んでおり、全て読むと20分ぐらいかかります。これを25年近く、全ての社員が毎週少なくとも1回は定例の会議などで声に出して読んでいます。
締め切り「今週中」はNG
具体的な「組織の習慣」とは。
この宣言のなかに、期限の管理に関する心構えを定めています。仕事の締め切りを決める場合、多くの会社は今週中とか今月中などといった表現を使うのではないでしょうか。私たちは「何時何分」まで決めます。例えば「今週金曜日の午後6時」などと申告するのです。テレワークをうまく機能させるには、こうした習慣が大切です。
今週中という言い方は曖昧で、それこそ日曜日の深夜0時までという解釈もあり得ますよね。待っている上司はいつ報告が届くのか分からず、精神的なストレスを感じます。テレワークで部下の顔が見えないならなおさらです。何時何分まで決めるスタイルが浸透している組織とそうでない組織とでは業務効率に大きな差がつくでしょう。当社はテレワークを始めてから10週間たっていますが、びくともしていません。
東京都などを対象にした緊急事態宣言にはどう対応しますか。
BCP(事業継続計画)として1から5まで段階を設定しています。在宅勤務を始めた当初はレベル4でしたが、緊急事態宣言が出たらレベル5に引き上げます(現在はレベル5に引き上げ済み)。
レベル4の段階では東京・大阪・福岡で勤務する4000人のうち200~300人は業務の関係でやむを得ず出社しています。レベル5になればほぼ全員が在宅で勤務します。初めてなのでどうなるか分かりませんが、在宅勤務の状況を社員にアンケート調査して感想や不満、不安などを調べます。結果は社外に公開して、テレワークを実施する企業のお役に立つようにしたいと考えています。