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日本発ユニコーンの筆頭にあげられるAI(人工知能)技術企業Preferred Networks(PFN)。同社を率いる西川徹代表兼最高経営責任者(CEO)は、AI人材育成支援や企業との新規事業開発など、研究開発で培ったノウハウを基に事業領域を広げる方針を掲げる。新型コロナ禍で密なコミュニケーションが難しくなり、ベンチャーならではの文化や心意気が薄れてしまったと危機感を抱く。ベンチャー文化を取り戻すべく、陣頭指揮をとる考えだ。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、玉置 亮太=日経クロステック/日経コンピュータ)

西川 徹(にしかわ・とおる)氏
西川 徹(にしかわ・とおる)氏
2006年、プログラミングコンテスト「ACM/ICPC」世界大会に出場したメンバーなど6人でPreferred Infrastructureを創業。2007年、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2014年、Preferred Networksを設立し社長に就任。2020年4月より現職。1982年11月生まれ。(写真:村田 和聡)
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AI技術の研修プログラム「AI解体新書」を始めました。社外の人材を対象にした研修を実施するのはPFNとして初めての取り組みです。

 より多くの人にAIを知ってもらいたいという思いから始めたプログラムです。昨今のAIブームでAIにできること、できないことがみえてきました。当社自身、様々な分野のAI研究開発に携わり、ノウハウがたまってきました。

 そこで主に事業開発を担当する人たちにAIの価値を改めて知っていただくために、AI解体新書を開発しました。どういう用途に使えるのか、あるいは使えないのか、我々が蓄積してきたノウハウを共有して、AIの可能性をもっともっと広げていきたいと考えたのです。

 AI技術の中でも深層学習にはまだまだ広がりがあると思っています。これまでの研究・開発活動では出会えなかった人たちとつながりを持つことで、可能性をより広げられるのではないかと。新たな顧客を開拓するよりも、AIの正しい使いどころを伝える講義のような意味合いが強い取り組みです。

事業担当者向けの研修をうたっています。

 コードをがりがり書くというより、事業面の問題にAIを適用するための課題を解決する能力の育成を目指しています。座学の講義もあれば受講者同士のディスカッションもあります。

 講義の中では我々がAIの研究・開発で実際に直面して行き詰まったポイントも紹介したいと思っています。技術スキルだけを追求するよりは事業に生かす観点から、私たちが抱えてきた課題と対処策を共有したいという意味合いが強いですね。

苦労した知見、公開してこそ

苦労して得たノウハウであるほど、自社内に抱え込みたくなるのでは。

 もちろん外に出せない部分もありますが、なるべく多くの部分を出すことで、受講者や顧客企業とより強い信頼関係を構築し、当社やAIをより深く理解していただくべきだと考えました。

 当社としても初めての試みですので、そもそもうまくいくか分かりません。講師を務める当社社員の講義スキルも、講義を積み重ねて上がっていく部分もあると思います。実際のプロジェクトにかかわるエンジニアの生の声を届ける試みとして、最初はより丁寧に受講者とやり取りし、フィードバックを受けながら育てていきたいです。

AI人材のすそ野を広げて日本の産業や社会に貢献すれば、ゆくゆくは自社の事業にも生きてくると。

 はい、AIを正しく知る人が増えればAIを活用する機会も増える。そうなると当然、AIに求められる精度や計算能力も上がっていきます。

 当社はスーパーコンピューターの開発にも取り組んでいますので、巡り巡って我々のビジネスにも大いに貢献してくるのではないかと考えています。