経済産業省と東京証券取引所は2020年8月、「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2020」を発表した。デジタル技術を活用して事業や組織、業務を変革し新たな成長や競争力強化につなげている企業35社を選んだ。選定組織であるDX銘柄評価委員会の委員長を務める伊藤邦雄氏は、日本企業のIT活用の出遅れに警鐘を鳴らす。DXを一過性のブームで終わらせず、企業価値向上につなげる秘訣を聞いた。
(聞き手は大和田 尚孝/日経BP総研イノベーションICTラボ、浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、鈴木 慶太=日経クロステック/日経コンピュータ)
「攻めのIT経営銘柄」を「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄」と改めました。狙いは何でしょう。
経営者にDX推進の重要性を認識してもらうためです。銘柄を選定し、企業が上場する株式市場の投資家に示すことで、DXに対する経営者の意識を高めるのが狙いです。
これまで日本企業はITを使った業務の標準化や効率化をある程度進めてきましたが、DXのように大きく変える「攻め」の部分は依然として弱い。出遅れている日本のIT活用を1歩、2歩、3歩と進めたいと考えています。
2015年に銘柄選定を始め、今回で6回目です。経営者の意識の変化を感じますか。
徐々に変わってきていると思います。DXの取り組み状況は会社によって差がありますが、「DXへの取り組みは必須だ」という経営者の意識はこの1年ほどで一気に高まったと感じています。