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 タイヤメーカー世界首位のブリヂストンが、データとデジタルを武器にタイヤの新たな存在意義を模索している。同社を率いる江藤 彰洋社長は約1100億円の大型買収やデータ人材育成などデジタル変革に腹をくくって臨むと宣言する。自動運転をはじめとする「CASE」で自動車市場が激変するなか、タイヤメーカーとしてどう勝ち抜くのか。次の一手を聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経 xTECH IT 編集長、松浦 龍夫=日経 xTECH/日経コンピュータ)

江藤 彰洋(えとう・あきひろ)氏
江藤 彰洋(えとう・あきひろ)氏
1960年大分県生まれ。86年東京大学法学部を卒業し、同年ブリヂストン入社。2010年執行役員CFO(最高財務責任者)、16年副社長経営企画管掌などを経て、19年1月に代表執行役COO(最高執行責任者)兼社長に就任、現在に至る。(写真:村田 和聡)
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自動車業界は電動化や自動化といった「CASE」など100年に1度とも言われる変革期にあります。タイヤメーカーとしてどう向き合いますか。

 自動運転やカーシェアリングの普及で自動車の保有台数は減る、したがってタイヤの需要も減るといった議論はずっと前からありました。確かに個人による所有が前提となる従来のような自動車の使い方は変わるでしょう。

 自動車の保有台数は減るかもしれないが、例えばカーシェアが広がれば稼働率は確実に上がります。すると平均の車齢が短くなる。世の中に出ていく自動車の台数やタイヤの需要が減るかどうか、まだはっきりしません。

 ブリヂストンとしてはタイヤの品質やブランド価値を高め、製品を適正価格で購入していただくのが原点であり、時代の変化に対応するうえで最も重要と考えています。同時にデジタル技術を基にしたソリューションに投資して、新しいビジネスモデルを作り出していく必要があります。

タイヤにおけるソリューションとは。

 例えばトラックやバス向けの「リトレッド」技術を基にしたサービスがあります。リトレッドとは使って摩耗したタイヤを交換するのではなく、表面を張り替えて何度も利用する技術です。航空機や、直径3~4メートルほどの大きさがある鉱山用トラックのタイヤにこのリトレッド技術を生かしています。タイヤの寿命が実質的に延びますので、新品に買い替えるよりもトータルのコストを下げられます。

 リトレッド技術にメンテナンスを組み合わせて、顧客企業が運行するトラックやバスといった車両のタイヤ回りを全てお引き受けするサービスを提供しています。日々のメンテナンスから最適な時期でのタイヤ交換、空気圧の管理までです。ほかにも掘り出した鉱物を運ぶベルトコンベヤーや車両に取り付けた油圧ホースのメンテナンスなど、事業を広げています。