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新型コロナウイルスは学会や大学にも変化を迫っている。国立情報学研究所の喜連川優所長は2020年3月、対面での発表が当たり前だった学会をオンライン形式で開催、注目を集めた。講義のオンライン移行を模索する大学にも知見を提供、小中高へと成果を広げる。オンラインとリアルの併用で、子育て中、不登校など様々な境遇の人に学びの場を提供できると説く。デジタル技術が開く、コロナ時代にあるべき学びの場の姿を聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、玉置 亮太=日経クロステック/日経コンピュータ)

喜連川 優(きつれがわ・まさる)氏
喜連川 優(きつれがわ・まさる)氏
1983年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了。情報処理学会会長、日本学術会議情報学委員長を歴任。データベース工学の研究に従事。2013年より国立情報学研究所所長(現職)。東京大学 教授。ACM SIGMODエドガー・F・コッド革新賞、電子情報通信学会功績賞、情報処理学会功績賞、日本学士院賞など。(写真:村田 和聡)
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新型コロナ禍が起きて間もない2020年3月、データベース関連の学会をオンラインで開きました。リアルからいち早く転換できたのはなぜでしょう。

 3月の学会発表を全てオンラインでやりました。例年はホテルの大きな会議室を使って、600人くらいが集まる密な空間でした。

 早い段階でオンラインに切り替える決断を下せたのは、中国から受け入れている留学生に様々な現地の情報を聞いていたからです。国立情報学研究所(NII)に留学生を5~6人受け入れているほか、日本から中国へ赴任している教官もいます。現地のビビッドな情報に触れるにつけ、「もうこれはあかんな」と分かってきました。我々はITの専門家だから、サイバーで学会をやるべきだと考え、実践したのです。

ITを活用することで、学会を中止せずに済んだわけですね。

 学会発表は学生たちにとってすごく重要な人生の思い出です。卒論や修論をまとめた学生が、たった10分か15分の発表のために何時間もかけて練習をして、どんなことを聞かれるか毎日のように考えて必死に準備します。