損害保険ジャパンは人工知能(AI)を活用した検索システムを構築した。約1万人いる営業担当者と全国の代理店約5万店が利用する。新たな照会内容を日々蓄積して社内ノウハウを共有する基盤を整えた。
「満期のタイミングで新車に入れ替えても、前契約の等級を引き継げますか」「自賠責の用途車種や保険期間などの訂正処理の際に、契約者の捺印(なついん)は必要ですか」。
人間に質問するときのようにこれらの自然文を検索窓に入力すると、関連するFAQ(質問・回答集)などを示してくれる損害保険ジャパン(損保ジャパン)の新システムが「教えて!SOMPO」だ。社内版および代理店版がある。保険商品や事務、営業活動に関して、社員や代理店担当者の疑問に答える。代理店とは損害保険会社と委託契約を結んだ販売店のことで、顧客との直接の接点を担う。
2018年3月に損保ジャパンは全営業店に社内版を、2020年2月に全国の代理店に代理店版を導入。AIを活用したこの新システムで、営業店の担当者が代理店からの照会応答に費やしていた時間を1日当たり40分、営業担当者全体で見ると年間にして約100万時間分を削減できた。2022年度をめどに営業担当者1人当たり、さらに1日30分の業務時間削減を目指す。
新システムの活用イメージは次の通りだ。まず代理店担当者が営業店にいる損保ジャパンの営業担当者に、商品や事務について代理店版システム上で問い合わせる。問い合わせを受け取った営業担当者は、すぐに答えが分からない場合、AI検索システムの検索窓に質問を自然文で入力する。システムは複数のデータソースを横断検索し、回答となる可能性の高いFAQや規定/約款、マニュアルのPDF、過去の照会/回答データなどを返す。
システムの回答で営業担当者が解決できなかった場合は、さらにシステム内の本社照会回答ワークフローを通じて本社部門に照会でき、回答を受けられる。この回答を基に営業担当者は代理店の問い合わせに答える。
代理店の担当者が直接、代理店版のAI検索システムを使うこともできる。代理店担当者が自分自身で解決できれば、営業担当者への照会が減ることになる。