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竹中工務店がデジタル変革の土台となる中核システムの運用を開始した。2022年度中に全業務をデジタル化するという意欲的な目標を掲げる。AI(人工知能)が施工管理に必要な人員を予測し、配置計画に役立てている。

東京都江東区の東京本店
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(写真提供:竹中工務店)
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 竹中工務店は2021年11月、「建設デジタルプラットフォーム」の運用を始めた。同社はグループ成長戦略の中核に働き方・生産性改革を位置付け、これを支える「土台」として同プラットフォームを米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のクラウド上に構築した。

 具体的には、営業や設計、見積もり、工務、施工管理、ファシリティマネジメント支援、人事、経理といった事業に関するあらゆるデータを統合管理し、BI(ビジネスインテリジェンス)で可視化したり、AI(人工知能)で予測したりする。竹中工務店のデジタル変革を推進するデジタル室でデジタル企画グループ長を務める金澤英紀氏は「(業務やシステムごとに)サイロ型でデータを管理していた部分も全社活用できるようにする」と力説する。

 竹中工務店は2022年度中に全業務のデジタル化を進める。さらに2024年末までに、200以上の既存の業務アプリケーションをオンプレミスからAWSに移行させる計画だ。これに伴い、ITインフラにかかるコストを25%以上削減できると試算する。

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建設業を取り巻く「三重苦」

 竹中工務店が働き方・生産性改革を急ぐ背景には、建設業を取り巻く「三重苦」がある。

 1つめが生産性の低さだ。日本建設業連合会(日建連)の「建設業ハンドブック2021」によると、建設業の付加価値労働生産性は全産業の6割程度、製造業と比べると半分ほどの水準にとどまる。金澤氏は「労働集約型のプロセスが多く残り、生産性は十分に上がっていない」と危機感をあらわにする。

 2つめがノウハウを持つ技能労働者の不足である。日建連は2025年度までの10年程度で技能労働者が100万人規模で離職すると試算しており、デジタル技術を駆使した省人化は待ったなしの状況にある。

 最後が働き方改革の遅れだ。2019年4月施行の改正労働基準法は時間外労働の上限を原則月45時間とするなどの規制を設けているが、建設業については5年間の猶予期間がある。新規制の建設業への適用が2024年4月に迫っている。人手に頼った非効率な業務運営を温存すれば、成長への足かせになりかねない。