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OCR機能を大幅に改修

 タブレット向け業務アプリの開発に当たっては、従来のアプリ開発にも増して、実際のユーザーである営業職員の視点に立ち「どうすれば使い勝手が高まるのか」という方法を工夫した。

図 端末刷新プロジェクトのスケジュール
図 端末刷新プロジェクトのスケジュール
営業職員の要望を基に使い勝手向上
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 施策の1つとして、営業職員に直接ヒアリングする機会を増やした。

 そもそもノートPCではなくタブレットを採用したことも、直接ヒアリングした結果だという。

 システムインフラの大規模リニューアルプロジェクト「Nissay-SMARTシステム」を立ち上げ、そのなかで営業職員向けの新端末を検討し始めたのは2015年のことだった。当時、営業職員はノートPCを何年にもわたって利用しており、その操作に慣れていた。携帯しやすいとはいえ使い慣れていないタブレットに刷新すべきかどうかは、判断がつかない状況だった。

 そこで開発チームのメンバーは2016年下半期から定期的な営業研修の場や全国の支社にタブレットのデモ機を持ち込んで、合計で約100人の営業職員からノートPCとタブレットの評価を聞いた。どちらについても推す声があったが、携帯性に優れるタブレットのほうが優勢と判断し、2017年3月に採用を決めた。

 同年4月から6月にかけて営業職員から直接、アプリに求める機能と使い勝手に関する意見をヒアリングした。地図情報機能に盛り込んだ、使い勝手の工夫の多くもこのとき出たものだ。

 他にも「紙の商品パンフレットを全てデジタル化してタブレットで顧客に見せられるようにしてほしい」という要望が多く出た。これも要件に盛り込んだ。

 「紙のパンフレットを大量に持ち歩くためにキャリーケースを引く営業職員さえいた。パンフレットをタブレットに収容して紙を無くせば、必ず全員が使うようになると考えた」(渡部祐士商品開発部販売ITソリューション開発部長)。

 こうして同年9月末に、業務アプリの要件を確定。それに基づいてアプリを開発した上で、2018年5月と9月に分けて営業職員に現場での利用を想定してアプリを使ってもらうテストを実施した。

 その際に大きな問題が判明したのが先のOCR機能である。

 前述の通り、OCRで文字を認識できない不鮮明な撮影になるケースが少なからずあった。そのあとで開催することになっていた、タブレットの教育研修での撮影講習によって対処することも考えられたが、思い切ってOCR機能を大幅に改修する覚悟を決めた。

 客先で何度撮影しても上手くいかなかったとき、営業職員に大きな心理的負担がかかることに配慮した。「営業職員が苦手意識を持つことなく、前向きにタブレットを使ってくれるようにしたかった。それには、誰でも初回から操作を失敗しない使い勝手が必須だった」(練尾課長)。

図 使い勝手を高めるための2つの方針
図 使い勝手を高めるための2つの方針
営業職員の視点に立って使い勝手を高めた(画像の出所:日本生命)
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 OCR機能を作り直すため、開発期間を当初計画から2カ月延長した。

富士通「らくらくホン」の知見を活用

 こうしてタブレットの業務アプリの使い勝手を高めたが、それでもまだ全員に使ってもらえるとは限らない。90歳代の営業職員もおり、リテラシーのバラツキが大きいからだ。

 そこで教育研修にも工夫を講じた。その1つが教育研修用の動画である。同社の営業端末の教育研修では初めて動画を取り入れた。

 動画制作ではタブレットの開発元である富士通の協力を取り付けた。富士通はユニバーサルデザインの携帯電話「らくらくホン」を開発しており、「誰でも使えるように説明する」知見を持つと見込んだ。

 狙い通り、らくらくホンの担当者が中心になって制作した動画は、タブレットや業務アプリの利用方法を平易に説明する「秀逸な出来映えになった」(後藤上席専門課長)という。

 一連の工夫により、現在では営業職員のほぼ全員がタブレットと業務アプリを順調に使い始めているという。

 今後は米IBMのAI(人工知能)「Watson」を業務アプリに組み込み、顧客1人ひとりに向く保険商品を選び出すレコメンド機能などを追加する計画だ。これらの機能でも使い勝手を高めるため、営業職員の声を聞きながら開発していく。