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高砂熱学工業は約40年使い続けた基幹システムをクラウドに刷新した。建設業特有の業務ニーズに応えるため、ローコード開発ツールで自社開発。最大300人が関与し、約3年に及んだ巨大プロジェクトを計画通り完遂した。

 「世間では『ローコード開発ツールではミッションクリティカルなシステムは作れない』という論調が強いが、当社は今回のプロジェクトでそれができることを証明したと思う」──。空調設備大手、高砂熱学工業の古谷元一執行役員DX推進本部長はこう言って胸を張る。

 同社は2022年4月、約40年間使い続けたメインフレーム上で稼働する基幹システムを、クラウド上に全面刷新した。パッケージでは対応できない業務ニーズに対応するため、ローコード開発ツールを駆使して計600以上の機能と画面を自社開発。最大300人が関与し、約3年の期間に及んだ巨大プロジェクトを計画通り完遂した。同社は今回の刷新により、法改正に伴うアプリケーション改修など、システム変更の対応力が向上したという。

高砂熱学工業の本社が入る新宿イーストサイドスクエア
高砂熱学工業の本社が入る新宿イーストサイドスクエア
(写真:高砂熱学工業)
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茨城県つくばみらい市に構える研究開発拠点「高砂熱学イノベーションセンター」
茨城県つくばみらい市に構える研究開発拠点「高砂熱学イノベーションセンター」
(写真:高砂熱学工業)
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高砂熱学工業
設立1923年
売上高3027億円(2022年3月期)
営業利益143億円(2022年3月期)
従業員数2131人(単体、2022年3月末)

技術者確保が困難に

 高砂熱学工業は、2023年に創業100周年を迎える、空調設備の企画・設計・施工・保守を手がける国内最大手の企業だ。約40年前に米IBM製メインフレームの上に基幹システムを構築し、長年にわたり使い続けてきた。

 「旧基幹システムは非常に出来が良く、40年間も使い続けられた。ただ、COBOLやPL/Iといった言語が混在して使われており、メンテナンスのために技術者を確保するのが年々難しくなっていた」と古谷執行役員は説明する。加えて、「最近は外部の多様なクラウドサービスと連携する必要性も増え、ホストインフラが時代にそぐわなくなっていた」(古谷執行役員)。そのため、基幹システムをクラウドベースに全面刷新することを決めた。

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