三菱重工業江波工場はGoogle Cloudを活用し作業員の生産性向上に挑む。Webカメラの映像と機械学習を組み合わせ、計測と分析を自動化。AI活用でベテラン作業員の「匠(たくみ)の技」の分析などにも発展させる。
新型コロナ禍における国内外の移動制限・自粛は、民間航空機市場に甚大な打撃を与えた。コロナ禍前は2019年からの20年間で運行機数が約2倍に増加すると見込まれていた民間航空機の需要は、2020年には前年比で最大70%の落ち込みを見せた。需要が元に戻るのは2024年の見込みという。
三菱重工業でBoeing(ボーイング)767、Boeing777、Boeing777Xといった航空機の胴体パネル組み立てを担う広島製作所江波工場では、アフターコロナの需要回復を見据えた操業の生産性向上に取り組んでいる。民間機セグメントエアロストラクチャー事業部工作部主幹の吉野秀明江波工場地域統括責任者は「コロナ禍で生産が落ち込んでいる今だからこそ、デジタルを活用した技術基盤を構築しておく。需要回復時、顧客に江波工場の面白さや魅力を感じてほしい」と狙いを語る。
その1つが、Webカメラの映像とAI(人工知能)を組み合わせて作業員のパフォーマンスを計測する取り組みだ。従来は人手で行っていた作業計測・分析の業務を、Webカメラ経由で取得した作業員の映像をAIが分析する形で自動化した。作業員本人へのフィードバックまでにかかる時間も大幅に短縮した。
2020年の夏頃にプロジェクトを開始し、2021年初頭にAIシステムを開発。2021年12月現在は江波工場における一部の業務に適用している段階だが、2021年度内に対象の製造ラインを広げて2022年度には江波工場全体に広げる計画だ。プロジェクトを担当した民間機セグメントエアロストラクチャー事業部工作部工務課の松田達也氏は「江波工場以外にも社内から反響があった。将来は三菱重工業の製造全体に広げられるかもしれない」と手応えを語る。