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 この連載は、記者である私がプログラミングを学ぶことをメインのテーマにしている。その背景にあるのが「老後の不安」だ。

 私は文章を書くこと以外にこれといった能力を持たない。そうした自分が、高齢者になったときに少しでも生活の安定にプラスになるような技能を得られないかという思いが、このコラムを始める動機の1つになっている。身もフタもない言い方をすれば「少しでもお金を稼げる可能性を広げておきたい」ということだ。

 最近、プログラミング以外にも老後の安定に役立ちそうな技能を習っている。「金継ぎ」だ。割れたりひびが入ったりした器を漆で修復し、金で装飾する技法である。対象は主に陶磁器だが、木工品やガラス製品に使われることもある。金継ぎの仕事を受けられるようになれば、収入源の1つになる。

 金継ぎの教室に通い始めたのは2019年3月初めなので、かれこれ10カ月になる。先生や自分の都合が悪い時期以外は、ほぼ毎週通っている。

 金継ぎは数年前からちょっとしたブームになっている。手軽にできることを売り物にした体験イベントや教室が多い。

 一方、私が通っているのは、漆器の表面を金などで装飾する蒔絵(まきえ)の技法を応用する本格的な金継ぎの教室だ。先生はプロの蒔絵師/漆アート作家。もともと金継ぎは独立した職業ではなく、蒔絵師が余技として行うものだからだ。

 生徒のレベルは「初級」「中級」「上級」の3段階に分かれており、私はいまだに初級である。中級に上がるには少なくとも1~2年はかかるとのことだ。教室に入るときに上級の生徒の作品を見せてもらったが、息をのむような見事な仕上がりだった。15年ほど通った生徒だという。

きっかけは妻の割れた湯飲み

 金継ぎを習うようになったきっかけは、妻が愛用していた湯飲みである。妻があるとき棚から落としてしまい、バラバラに割れてしまった。

 妻は捨てると言ったが、私は「もったいないから金継ぎで直したら」と提案した。そこで、妻が自宅の近くにある金継ぎの教室を探してくれた。教室だけでなく、金継ぎの依頼も受けているという。

 その教室に、金継ぎで直してもらうつもりで、妻の割れた湯飲みを持って行った。金継ぎは難しそうだし、自分でやるのは面倒だと思っていたからだ。金継ぎを依頼するとかなりの金額になると説明されたが、プロが手がけた金継ぎの器が手に入るのであれば、それでもかまわないと思った。

 ところが、先生と話をしているときに、うっかり「金継ぎをやることにも興味がある」と言ってしまった。それで「だったら自分でやればいい」と、いつの間にか教室に通うことになってしまった。