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 次世代Web技術である「Web3」で重要な役割を果たすのが「NFT(非代替性トークン)」である。ブロックチェーンを利用してデジタルアイテムの一意性(オリジナルであること)を保証するものだ。

 デジタルアイテムはコピーが容易なため、これまで常に海賊版の問題に悩まされてきた。NFTであれば作品の一意性を保証できるため、本物とコピーを判別できるようになる。

 もっとも、NFTの一時的なブームは去りつつある。極端な高額で売買されるケースが減り、投機の対象という面が薄まりつつあるからだ。

 個人的には、このことはNFTにとってそれほど悪いことではないと思っている。市場規模が縮小したようには見えるが、NFTの持つ重要性は変わっていない。むしろ、NFTが手軽になることで普及が進むというプラスの面もある。

 実際に、今でも注目を集めているNFTは多い。例えば、米Walt Disney(ウォルト・ディズニー)のNFTコレクションは高い人気を誇っている。有力な知的財産(IP)を持っている日本企業もNFTの事業化を積極的に検討しているようだ。

 生活に密着したNFTの使い方をする例も出てきた。米Starbucks(スターバックス)は、Web3を利用した「Starbucks Odyssey」というサービスを2022年末に試験的に始めている。このサービスでは、ゲームなどのアクティビティーを通してNFTのスタンプを集められるという。会員間でのNFTの売買にも対応する予定だとしている。

NFT初心者に立ちはだかる2つの壁

 ただし、個人がNFTを始めるのは現時点ではそれほど簡単ではない。障壁は主に2つあると考えている。

 1つめが「暗号資産の壁」だ。NFTを購入する際には、対価を暗号資産で支払うのが一般的だからである。

 日本で暗号資産を入手するには、まず暗号資産取引所に依頼して口座を作成しなければならない。その際には、厳格な本人確認(KYC)が法的に必要になっている。「すぐに口座を開設できる」といった手軽なものではなく、数日以上かかるのが一般的だ。口座ができたら、取引所が指定する方法で日本円を入金する。これではじめて暗号資産を購入できるようになる。

 2つめが「ウォレットの壁」だ。Web3のサービスを利用するには、「ウォレット」と呼ばれるソフトウエアをパソコンにインストールするのが一般的だ。ウォレットで暗号資産を送ったり受け取ったりする。