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 インターネットの情報にアクセスするために欠かせないアプリケーションがWebブラウザーだ。現在は、米Google(グーグル)が提供する「Chrome」が最もシェアが高く、Windowsが標準搭載するChromeベースの「Edge」もシェアを伸ばしている。米Mozilla Foundation(モジラ財団)傘下の米Mozilla Corporation(以下、Mozilla)が開発する「Firefox」は、シェアではこれらに及ばないものの、よく使われているブラウザーの1つだ。

 ところが2022年1月13日、多くのユーザーのFirefoxに不具合が発生した。SNS(交流サイト)上で「Firefoxがハングアップしてインターネットにつながらない」とする報告が相次いだのだ。そうしたケースでは、タスクを強制終了させたりパソコンを再起動したりしても問題を解決できないことが多かった。

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 不思議なことに、このトラブルの影響を受けずFirefoxを問題なく使えるユーザーもいた。また、同ブラウザーの[設定]-[プライバシーとセキュリティ]-[Firefoxのデータ収集と利用について]のチェックボックスをすべて外すことで不具合を回避できるケースもあった。

 なぜこんなことが起こったのか。Mozillaの技術ブログでは、2月初めに不具合の原因を公表している。この報告を基に、不具合による不可解な挙動がどのようにして起こったのかを見ていこう。

グーグルのクラウド設定変更が引き金に

 現在のブラウザーは、クライアントにインストールされたブラウザーのアプリだけでなく、インターネット上の様々なサービスと連携して機能を実現している。Firefoxでいえば、アプリのアップデート、デジタル証明書の管理、クラッシュ時のMozillaへの報告といった機能だ。ユーザーの使用状況をMozilla側に送ってFirefoxの改善に生かす「テレメトリー」という機能もある。

 こうしたサービスは、ロードバランサーを使って負荷を均等に分散するよう、異なるクラウドサービス上に実装されている。その1つとして、グーグルのクラウドサービス「Google Cloud」も使われている。そしてトラブルの引き金を引いたのが、グーグルがGoogle Cloudの設定を予告なしに変更したことだった。

 Google Cloudのロードバランサーには、最新の通信プロトコルである「HTTP/3」のサポートに関する設定がある。「有効」「無効」「自動(デフォルト)」の3つの状態があり、Mozillaでは「自動(デフォルト)」を選択していた。