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 デジタルトランスフォーメーション(DX)。日経クロステックの読者であればおなじみの言葉だろう。企業がデジタルテクノロジー、すなわちITを使ってビジネスを根本的に変革することを指す。

 もともとは、スウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授(当時)が、2004年に発表した「INFORMATION TECHNOLOGY AND THE GOOD LIFE」という論文で使った言葉だ。本来は生活全般に対するデジタルテクノロジーの影響を示していたが、現在ではビジネスに限って使われることが多い。

 ちなみに、「トランスフォーメーション」がなぜ「X」になるのかが不思議な人もいるだろう。英語のトランス(trans)には「変える」や「超える」という意味があり、クロス(cross)も同様の意味だ。このことからクロスを表す「X」が略として使われているという。

 現在の技術系メディアはDXの話題であふれている。試しに日経クロステックでタイトルに「DX」を含む記事を数えてみたところ、2022年1月の1カ月間だけで43本もあった。平均すると1日に1本以上になる。さらに、本文中にDXという言葉が出てくる記事はその何倍もある。ITに関連した記事はほぼDX一色といっていい。

 DXは「従来のIT化とは異なる」という文脈で語られることも多い。IT化はパソコンや情報システムの導入を指すのが一般的で、作業の効率化や人件費の削減を主な目的としていた。

 これに対し、DXは経営判断やビジネスモデルにITを生かすという側面が強い。企業の存続そのものがITの活用にかかっているという意味で、DXの意義が強調されている。

遅れた企業が追いつくための活動

 一般にDXの推進は「良いこと」、DXの遅れは「悪いこと」とされている。私もそのことに異論はない。しかし、「そもそもDX自体がそんなに素晴らしいことなのだろうか」という疑念を持っている。

 というのは以前、ある投資系コンサルタントから「シリコンバレーの先進的な企業で、DXについて議論しているところはない」という話を聞いたことがあるからだ。