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 システム開発にとって、システムエンジニア(SE)はなくてはならない職種だ。ただ、SEがどのような職種なのかは、企業や個人によって解釈がぶれやすい。特に「SEはプログラミングができるべきか」は、ネットでよく議論になる。今回はこれについて考えてみよう。

 実は、私は日経BPに入社しなければSEになる予定だった。私が就職活動をしていたのはバブル末期のいわば「売り手市場」の時代。その後の就職氷河期に比べれば、はるかに簡単に内定をもらうことができた。

 大学の専攻は生物学だったが、その方面の適性はないと判断し、コンピューター関連企業への就職を希望していた。しかし外資系企業の技術職だと、工学系以外の学生は基本的に門前払いだった。

 そんななか、個人での会社訪問を受け入れてくれたのが日本ユニシス(当時の社名)だ。結局、私が就職活動で会社訪問したのはこの1社だけである。米Unisys(ユニシス)は、世界初の汎用デジタルコンピューター「ENIAC(エニアック)」の流れをくむ商用コンピューター「UNIVAC(ユニバック)」で知られる。コンピューターおたくだった私はわくわくした。

 当時、日本ユニシスの本社は赤坂の丘の上にあり、長い坂を上っていった記憶がある。その後、本社は豊洲に移転し、赤坂の跡地は現在、高層マンションになっている。

 豊洲の日本ユニシス本社には、記者として取材や打ち合わせで何度も行ったことがある。そのたびに「自分がこの会社に入っていたらどんな人生になっていたのだろう」とよく考えていた。皆さんご存じのように、日本ユニシスは2022年4月、「BIPROGY(ビプロジー)」に社名変更している。

 この就活時の会社訪問で日本ユニシスの社員からされたのが、「エジプトのピラミッドをつくるときにもSEはいた」という話である。SEはコンピューターに特化した仕事ではなく、システムがあるところにはSEは必ずいるとのことだった。その話しぶりから、SEという仕事に誇りを持っていることがうかがえた。何十年も前のことなのにいまだに覚えているということは、よほど印象に残ったのだろう。

「しない」と「できない」には天と地の差がある

 ピラミッドの建設時にSEがいたとすれば、そうしたSEはコンピューターを使うことはなく、もちろんプログラミングもしなかっただろう。しかし、このことをもってSEとプログラミングが無関係だと結論づけるのは乱暴すぎる。実際には、SEがコンピューターに関わる仕事だという解釈に反対する人はいないはずだ。

 ウオーターフォール型のシステム開発では、要件定義や上流設計を担う職種をSE、設計に従ってソースコードを書く職種をプログラマー(PG)と呼ぶのが一般的だ。

 開発するシステムの規模や開発体制によっては、SEがPGを兼ねることもある。こうした場合は、SEがプログラミングできるのは当然だ。一方、SEが要件定義や上流設計に専念している場合は、プログラミングをしないことは何ら不思議ではない。