プログラミングを重要な能力だと見なす意見が昔よりもかなり増えたと感じている。以前のIT業界には、プログラマーをコーダーと呼び、設計通りにコードを書くだけの作業者と見る風潮があった。そうした風潮がゼロになったわけではないが、プログラミングが優れた技能だと捉えられる場面は増えたと思う。
プログラミングが注目を集めるようになったのは基本的には良いことだ。ITとは関係ない職業の人が、プログラミングを学んでIT業界に転職しようとする流れも生まれている。プログラミングを題材にした情報商材やプログラミングスクールもよく目にするようになった。
ただ、そうした情報商材やスクールの一部に対して、個人的に違和感を覚えることがある。「未経験者でも年収1000万円を稼げるようになる」といったうたい文句を掲げているケースだ。
年収1000万円を稼げるというのは、それだけ高い金額のオファーを提示される優れたプログラマーになれるという意味だろう。プログラミングは、習得のハードルがかなり高い技能だ。未経験から短期間でそんなレベルになれるとはにわかには信じがたい。
もっとも一口に情報商材やスクールと言っても、内容は千差万別だ。内容の薄い情報を高い値段で売る詐欺に近い情報商材もあれば、就職先の紹介など手厚いサポートを売り物にしたスクールもある。私が知らないだけで、未経験者でも高収入を得られるようになる夢のようなスクールがあるのかもしれない。
結局のところ、情報商材やスクールの質は、実際に購入したり通ったりしなければ分からない。だから、それについてはここでは議論しない。代わりに議論したいのは「受講者の質」である。
「人に教えてもらおう」という姿勢
私はIT分野の記者という仕事柄、優秀なプログラマーに取材することが多い。個人的に参加している勉強会でそうしたプログラマーと出会うこともある。
そうした優秀なプログラマーに共通している特徴が、「技術に対する好奇心が並外れて強いこと」である。新しい技術が登場すれば、自分の業務に直接関係がなくても、個人的に試してみる。どんどん新しいサービスを試してみて、役に立ちそうならばすぐに取り入れる。あるいは、自分自身が新技術を生み出していく。
そうしたプログラマーはコミュニティー活動にも熱心な印象がある。現在のIT分野は日進月歩で、新しい技術が次々に登場している。だから、自分が理解した技術の情報をコミュニティーに発信し、コミュニティーからも新技術の情報を吸収する。そうしたプログラマーがどんどん実力を伸ばしている。
プログラミング初心者であっても、好奇心さえあれば独習できる環境はいくらでもある。書店に行けば、多くの初心者向け解説書がある。実力がついてくれば、そのレベルに応じた解説書も用意されている。
加えて、インターネットにも数多くの教材がある。プログラミングを無料で学習できるサービスはたくさんある。ソースコードが公開されているオープンソースのソフトウエアも多い。そうしたコードを読めば、実際にどのようにプログラムを書けばいいかが分かる。