1年ほど前、ある有名なソフトウエアエンジニアのツイートが話題になった。そのエンジニアによると、35歳を過ぎても能力や報酬が伸び続ける生涯現役のロールモデルになるシニアプログラマーが増え、「プログラマー35歳定年説」はとっくに過去のものになったという。
しかしこのツイートは、そうしたシニアプログラマーの前に立ちふさがる「本当に恐ろしい問題」があると指摘していた。「老眼」だ。プログラマーに限らず、多くの人は加齢に伴って近くのものが見えにくくなる老眼に悩まされるようになる。
かく言う私もそれなりの年齢であり、軽い老眼がある。ただ本から30センチメートルほど離れればなんとか読めるので、たいした問題ではないと思っていた。
だが思い返してみると、最近めっきり紙の本を読まなくなっていたのに気づいた。日ごろ読むものといえば、ほとんどがWeb記事である。おそらく紙に印刷された文字が老眼の影響で読みにくくなり、自然に紙の本から遠ざかっていたのだろう。パソコンの画面はある程度離れたところから見るので、私の場合は今のところ老眼の影響はそれほどない。
ほかにも老眼になって困ることが出てきた。辺りが真っ暗なところでは、スマートフォンの画面の文字が読めなくなってしまうのだ。不思議な現象だが、老眼にはよくある症状だという。
なぜこんなことが起こるのか、眼科医の先生が書いた解説を読んで理解できた。暗いところでは、より多くの光を取り入れようとして瞳孔が開くのが理由だという。
カメラに慣れている人ならわかると思うが、レンズの絞りを開けると被写界深度が浅くなる。被写界深度とは、被写体の前後のピントが合っている範囲のことだ。絞りをある程度以上絞れば、近景から遠景まですべての範囲にピントが合ういわゆる「パンフォーカス」になる。ここから絞りを開けるに従ってピントが合う範囲が狭くなり、ぼける範囲が広がっていく。
瞳孔が開くということは、カメラのレンズでいえば開放絞り(絞りを最も開けた状態)のようなものだ。ピントが合う範囲は最も狭い。このため、老眼による調節機能の衰えにより、ピントが合わなくなるのだろう。
老眼への対策としては、ピント調節力を鍛えるトレーニングなどが提唱されている。老眼が治ることはないが、老眼の進行を遅らせる効果があるという。