企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)では、相変わらず「ノーコード」や「ローコード」が大人気だ。全くコードを書かずに開発できるのがノーコード、少量のコードで開発できるのがローコードである。プログラミングに比べて学習コストが低く、アイデアをすぐに形にできるというメリットがあるとされている。
DXの文脈でよく名前が挙がるサービスやツールとしては、サイボウズの「kintone」や米マイクロソフトの「Power Apps」がある。ほかには米セールスフォースの「Lightning Platform」、あるいは米アウトシステムズやウルグアイ・ジェネクサスの製品なども使われているようだ。
kintoneを見ていつも思い出すのが、2008年に開発が停止した「Tuigwaa」(トゥイガーと読む)というオープンソースソフトウエアだ。情報処理推進機構(IPA)の「未踏ソフトウェア創造事業」に採択され、2005年から2006年にかけて開発された。Tuigwaaを使えば、Webブラウザーからの操作だけでコードレスでWebアプリケーションを作成できる。要はkintoneと同じコンセプトだ。
Tuigwaaとkintoneの最大の違いは提供形態である。Tuigwaaはサーバーにインストールするソフトウエアだったのに対し、kintoneはPaaS(Platform as a Service)として提供されている。利用を始めるハードルはPaaSのほうがはるかに低い。Tuigwaaの開発が止まった理由はハードルの高さによる普及の伸び悩みだけではないだろうが、両者の明暗を大きく分けたのはこの点だといっていいだろう。
私はTuigwaaを初めて見たとき、「企業がこのソフトを導入すれば、プログラミングを知らない人でも業務を改善できるのではないか」と感じた。まさに、ノーコードやローコードのメリットである。Tuigwaaは時代を先取りしすぎていたのかもしれない。
小規模な業務改善やプロトタイプ作成に向く
ノーコードやローコードはDX以外の分野でも注目されている。クリエーティブ分野では、スプレッドシートを読み込ませるだけでWebアプリを作成できる「Glide」やスマホアプリをノーコードで開発できる「Adalo」といったツールが有名だ。他の人とノーコードやローコードの話をするときには、前提としているツールが「kintoneやPower Apps」か「GlideやAdalo」かで話がかみ合わなくなる可能性があるので、注意したほうがいいかもしれない。