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 「え、JavaScriptとJavaは違うものなんですか」。最近、ITに不慣れな若い人とプログラミングの話をしていて、このように言われた。どうやら「JavaScript」を略した呼び方が「Java」だと思っていたようだ。

 名前がよく似ているし、技術的な知識がなければ勘違いも無理はないと思う。しかし、IT企業の営業担当者などがこうした勘違いをしていることもある。JavaScriptをJavaと略しているのを聞いて「いやいや、その略し方はアウトでしょう」と思った経験がある人は多いのではないだろうか。

 似たような例としては、「Wikipedia(ウィキペディア)」を「Wiki(ウィキ)」と略す人が挙げられる。もっとも、WikipediaとWikiは全く関係ないわけではない。Wikiは、不特定多数のユーザーがWebページの内容を編集できるようにするシステムだ。Wikiを利用して実現されたインターネット上の百科事典がWikipediaである。

 よくよく意味を考えるとおかしな略語は多い。例えば、「ソーイングマシン」の「マシン」だけがなまった「ミシン」や、「スーパーマーケット」の接頭辞だけを取り出した「スーパー」などだ。個人的な感覚ではWikipediaをWikiと略すのは気持ち悪いが、かろうじて許容範囲内だろう。

 一方、JavaScriptにはJavaは使われていないし、両者に特に関係はない。それぞれが独立した別のプログラミング言語だ。Javaという言語が既にある以上、JavaScriptをJavaと略すのは混乱の元になる。

 JavaScriptとJavaの共通点は「オブジェクト指向言語であること」と「もともとWebページ上で動作するプログラムのために開発されたこと」くらいだろうか。もっとも、オブジェクト指向プログラミングの実現の仕方は両者でかなり違う。また、Javaは今ではWebページ上で動作するプログラムには使われていない。

 実際に言語仕様はかなり異なる。ざっくり表現すると、Javaは柔軟性よりも大規模開発での生産性を重視しているのに対し、JavaScriptは大規模開発での生産性よりも柔軟性を重視した言語だ。言語の性格としては正反対といっていい。

 それなのに、なぜこんな誤解を生むような名前になったのか。それを理解するために、それぞれの言語の成り立ちをひもといていこう。

もはやJavaアプレットは動かない

 Javaの前身は、米サン・マイクロシステムズ(2010年に米オラクルが吸収合併)で1991年ごろに開発された家電制御用言語「Oak」だ。Oakは家電制御の分野では成功しなかったが、1995年に「Java」と改名し、Webブラウザーでプログラムを動かすための言語として再出発した。