自らクルマを所有しなくても、目的地まで早く、そして安く移動できるサービスの実現を目指す「MaaS(マース)」。最近、日本でもにわかに注目度が高まっているが、MaaSの中核を成すと見られる「ライドシェアサービス」に関しては、全くと言ってもいいほど普及していない。世界的な普及から一線を引いているためで、それ故、日本にはライドシェアサービスの最新事情や今後の展望についての情報はあまり入ってこない。

 こうした状況の中、ライドシェア先進国の米国では、同サービスの雄であるウーバー(Uber Technologies)が2019年5月に株式公開(IPO)を予定。競合のリフト(Lyft)はそれに先立つ3月29日にIPOを果たした。この事実は、米国市民にとってライドシェアが生活に不可欠のサービスになっていることを端的に意味する。

 本連載では、ライドシェアサービスの「現実と未来」について、シリコンバレー在住歴24年の元日本企業の駐在員で、以前はウーバー、現在はリフトの運転手をしている吉元逸郎氏に寄稿してもらう。ライドシェアサービスやビジネスの最新事情、それを支えるテクノロジー、そして米国版MaaSに向けた将来展望などについて連載形式で紹介する。

吉元 逸郎(よしもと・いつろう) 
ライドシェア運転手兼ビジネス・カタリスト
カシオ計算機で組み込みソフト開発や商品企画などに携わった後、1996年にシリコンバレーのR&Dセンターに赴任。ハンドヘルドPC用アプリベンダーのUI改善や品質管理などを担当。2002年にナムコ北米法人で携帯キャリア向けのワイヤレスゲーム事業を立ち上げる。2005年に世界最小キーボードのベンチャーを起業するも資金難で頓挫。以後、新規ビジネス提案や、ハード/ソフト/サービスの品質と操作性(UI/UX)向上で顧客企業を活性化させる“ビジネス・カタリスト”になる。2009年にビジネス・ブレークスルー大学大学院を修了し、MBA取得。現在はリフトの運転手をしながら就職活動中。シリコンバレー在住歴24年。