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 官製値下げで激動の1年だった2021年の携帯電話業界。2022年はどうなるだろうか。

 携帯大手は一連の値下げにより、業績面で大きな痛手を受けた。2021年度の減収影響は例えばKDDI(au)が「600億~700億円」、ソフトバンクが「700億円」。安価なサブブランドやオンライン専用ブランドへの移行は徐々に進んでいくので、減収影響は2022年、2023年とさらに深まっていく見通しである。このため、もはや携帯大手には値下げの余力がなく、料金競争は2021年で一段落するとみる株式市場関係者が多い。

純増重視のソフトバンクはどう動く?

 ただ、新規参入の楽天モバイルがこのまま黙っているだろうか。純増数は堅調に伸びているものの、2021年9月末時点の契約数は411万件(MVNOを含めると510万件)。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長はかつて損益分岐点について700万件と言及したが、その後の料金見直しでハードルはさらに高まったとみられる。楽天モバイルに立ち止まっている余裕などなく、とにかく攻め続けなければならない。

 まず注目となるのが2022年の春商戦である。楽天モバイルは2022年4月以降、1年間無料キャンペーンの影響がなくなり、自社回線エリアの拡大でKDDIに支払うローミング(相互乗り入れ)費用の負担も大幅に減る。これを待たずに2~3月にも攻勢を仕掛けてくるとの観測が浮上している。もっとも、もう一段の値下げに踏み込めば黒字化がさらに遠のいてしまう恐れがある。楽天グループが強みとする「経済圏」をうまく結び付け、いかに魅力的な施策を打ち出せるかが鍵を握る。

 楽天モバイルの打ち手次第では競合他社も動かざるを得なくなる。KDDIとソフトバンクは2021年4~6月期に解約率が悪化すると、サブブランドとオンライン専用ブランドの両面で即座にテコ入れを図ってきた。2021年ほどの激しさは見込めないとしても、料金競争が再燃する可能性は十分にある。

 特にソフトバンクは2021年3月末時点で2593万件のスマートフォン契約数を2024年3月末までに3000万件に伸ばす目標を掲げる。宮川潤一社長兼CEO(最高経営責任者)は2021年11月の決算説明会で値下げによる厳しい状況を訴えながらも、「純増にこだわる旗を降ろすつもりはない」と明言した。ソフトバンクが純増の維持で楽天モバイル対抗に動けばKDDIも追随を余儀なくされ、再度の料金競争に発展するかどうかは「楽天モバイルとソフトバンクの動き次第」(SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリスト)となる。