本コラムで以前に取り上げたトラフィックポンピング問題への対処をNTTドコモが要望したことを受け、総務省の有識者会議で本格的に検討することが2022年12月に決まった。トラフィックポンピングとは音声通話のかけ放題を悪用して接続料を不正に詐取する行為のこと。ドコモは接続料を不当につり上げているからこそトラフィックポンピングが成り立っているのであり、この解決策として接続料を相互に支払わない「ビル&キープ方式」の導入が必要と主張している。
関連記事 音声通話かけ放題で接続料を搾取、ドコモを苦しめるトラフィックポンピングの正体実は、ドコモがビル&キープ方式の導入を求める大きな狙いがもう1つある。携帯大手の接続料格差問題の解消だ。携帯大手の接続料格差は10年以上前から紛争の火種となっており、今後の議論次第ではこちらも終止符が打たれる可能性がある。
過去には紛争処理委員会へあっせん申請も
接続料は設備コスト(原価+適正利潤)/需要(トラフィック)で決まり、音声接続料は着信側事業者が発信側事業者から徴収する仕組みとなっている。筆者の記憶によると、接続料格差問題が大きくクローズアップされたのは2009年。普段は競合他社を批判しない優等生のドコモがわざわざ説明会を開き、「トラフィックはソフトバンクとほとんど変わらないにもかかわらず、接続料が大幅な支払い超過となっている。その水準は億円単位で3桁を超える。接続料格差は許容範囲を超えている」などと不満をぶちまけた。
2011年にはドコモとソフトバンク(当時はソフトバンクモバイル)が接続料を巡り、互いを相手取って総務省の紛争処理委員会にあっせんを申請する珍事にまで発展した。意見聴取や意見書のやり取りを経ても当事者間に合意が成立する見込みがないとして、結局はどちらのあっせん申請も打ち切りとなった。接続料は総務省が促進を図っていたMVNO(仮想移動体通信事業者)に大きく影響することもあり、その後、適正性や透明性、公平性を高めるための議論が何度も行われてきた。
接続料の算定ルールはかなり精緻化され、事業者間の格差もだいぶ縮まった印象だったが、ドコモによると2021年度で1.2倍の開きがあるという。2021年度適用の音声接続料はドコモが1.26円に対し、KDDIが1.56円、ソフトバンクが1.54円といった具合だ(いずれも30秒当たりの金額)。「格差は縮小しているが、依然として残っており、支払い超過が続いている。再度の検証が必要と考えている」(NTTドコモ経営企画部料金企画室担当部長の東原弘氏)。