国内携帯大手3社の2022年4~12月期連結決算(国際会計基準)が出そろい、NTTドコモグループとソフトバンクが増収増益、KDDIが増収減益だった。大手3社とも官製値下げの影響が残っているほか、足元では電気代高騰で基地局やデータセンターなどの運用コスト増加にも悩まされている。例えば官製値下げのマイナス影響はソフトバンクで710億円、電気代高騰のマイナス影響はNTTドコモで180億円といった具合だ(どちらも2022年4~12月期の実績)。
売上高(前年同期比) | 営業利益(前年同期比) | |
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NTTドコモグループ | 4兆4244億円(+1.5%) | 8888億円(+0.3%) |
KDDI | 4兆1828億円(+4.2%) | 8434億円(▲3.6%) |
ソフトバンク | 4兆3454億円(+4.1%) | 9820億円(+21.7%) |
これだけのマイナス影響がありながら、NTTドコモとソフトバンクは増収増益だった。金融・決済をはじめとした非通信事業や法人事業の拡大、コスト削減などでカバーした。KDDIは2022年7月に引き起こした大規模通信障害の影響が重なり、増収減益もやむを得ない面がある。同社は2023年3月期に電気代高騰影響で約200億円、通信障害影響(返金や対応費など)で約150億円のマイナス影響を見込むが、「増益はなんとしても達成したい」と力を込めた。各社とも強さが際立った決算だった。
ドコモとKDDIは2四半期連続でARPUが増加
携帯大手3社は来期(2024年3月期)も官製値下げの影響が続く見通し。安価な料金プランにまだ乗り換えていないユーザーが残っているほか、今期の途中で乗り換えたユーザーに関しても値下げの影響が通年で利いてくるのは来期となるからだ。ソフトバンクは来期も500億円のマイナス影響が出ると見込んでいる。
つまり、来期も非通信事業や法人事業の拡大、コスト削減などで官製値下げの影響を補う構図は変わらない。数カ月前までは来期も「我慢の年」と想定していたが、ここにきて明るい兆しが出てきた。ARPU(契約当たり月間平均収入)の下げ止まりだ。中でも顕著なのが、NTTドコモとKDDIである。
NTTドコモの2022年10~12月期の「モバイルARPU」は4090円だった。前年同期比で50円減少したものの、2022年7~9月期の4080円から10円の増加である。その2022年7~9月期も2022年4~6月期の4030円から50円増加していたので驚いたが、「映像をスマホで見る文化が広がっている」(井伊基之社長)との説明を聞いても半信半疑だった。2四半期連続の増加となればさすがに実力を認めざるを得ず、来期はいよいよ悲願の「反転(前年同期比プラス)」が見えてきた。