通信大手の2021年4~12月期連結決算は3社とも好調だった。KDDIやソフトバンクは携帯電話料金の引き下げで年間700億円前後の減収影響を見込むが、他事業の成長できっちり補ってきた格好だ。NTTとKDDIの増収増益に対し、ソフトバンクだけが増収減益となっているものの、宮川潤一社長兼CEO(最高経営責任者)は2022年3月期の営業利益について「少なくとも過去最高益を達成できる見込み」と自信を見せた。
営業収益(前年同期比増減率) | 営業利益(前年同期比増減率) | |
---|---|---|
NTT | 8兆9232億円(2.1%) | 1兆5396億円(2.5%) |
KDDI | 4兆138億円(2.3%) | 8745億円(0.4%) |
ソフトバンク | 4兆1738億円(9.6%) | 8212億円(▲2.4%) |
好調ぶりが際立っていたのはNTTである。営業収益・営業利益ともに過去最高。国内も海外も好調なNTTデータの貢献が大きく、通期業績予想を上方修正したが、他の事業会社も順調だ。通期業績予想に対する営業利益の進捗率はNTTドコモが84%、NTT東日本が100%、NTT西日本が103%となっている。ドコモは年間最大の春商戦を控えるほか、NTT東西も2021年3月期に比べて利益の押し下げ要素があるとはいえ、まだ上積みを期待できそうな気配である。
home 5Gに続いてhomeでんわも投入
NTTグループの稼ぎ頭であるドコモは、2020年12月に井伊基之社長が就任してからだいぶ変わった。オンライン専用ブランド「ahamo」の投入には衝撃を受けたが、以降も競合他社への対抗を手堅く進めている。まずは2021年8月に提供を開始した5G対応ホームルーター「home 5G」。家庭やスモールオフィスで光回線の代わりにインターネット接続に使えるサービスだ。
2022年2月にはモバイル中継網を活用した固定電話サービス「homeでんわ」の提供を3月下旬に始めると発表した。固定電話機を専用端末に接続するだけで東京なら「03」などで始まる0AB~J番号を使って受発信できる。home 5GもhomeでんわもNTT東西の契約者を奪うことにつながりかねず、驚かされた。
NTTの澤田純社長は2月7日の決算説明会でこの点を問われ「競合他社は既に(同様のサービスを)提供している。NTT東西はどんどん(顧客を)抜かれている状況で調整は必要ない。取られているものを取り返す」としたものの、数年前であれば考えられなかったことだ。