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 格安スマホを手掛ける日本通信が音声通話サービスの提供に当たって携帯大手に支払う料金を巡り、NTTドコモとの協議が不調に終わったとして総務大臣の裁定を申請していた件は日本通信の勝利で決着しそうである。

 日本通信が裁定申請で求めたのは、ドコモは音声通話サービスを「原価+適正利潤」の卸料金でMVNO(仮想移動体通信事業者)に提供せよというもの。ドコモがユーザー向けに提供している「かけ放題オプション」や「5分通話無料オプション」も原価+適正利潤の卸料金で提供すべきだと訴えた。

 総務省が2020年2月4日に公表した裁定案では前者を認め、後者を退けた。「1勝1敗」の格好だが、日本通信の福田尚久社長は「(100点満点で)170点の回答」と歓迎した。もともと前者が最大の目標だったからだ。今回の裁定案のポイントを紹介したい。

今後のスケジュール。電気通信紛争処理委員会における審議を経て2020年3~4月に裁定が出る見通し。裁定案の内容が大きく変わる可能性は低いとみられる
今後のスケジュール。電気通信紛争処理委員会における審議を経て2020年3~4月に裁定が出る見通し。裁定案の内容が大きく変わる可能性は低いとみられる
(出所:総務省)
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「1秒単位の課金」で設計しやすく

 裁定案ではドコモに対し、音声通話サービスを原価+適正利潤の卸料金で提供することを命じた。原価+適正利潤といっても原価に算入できる費用は限られ、適正利潤も最低限に抑えられているため、携帯大手にとっては実質「原価に近い料金での貸し出し」を求められたことになる。

 興味深いのは、音声通話サービスの卸料金を「契約数に連動する費用」と「通話時間に連動する費用」に分けて定義した点だ。データ通信サービスの接続料が伝送路設備の情報の管理などに関わる「回線管理機能」の費用と、トラフィックに応じた「帯域幅」の費用に分かれているのと同様な構造とした。

 MVNOにとって何がうれしいかといえば、現行の卸料金にある「基本使用料」が回線管理機能の費用に代わり、その原価と利潤の設定基準が厳しくなることだ。つまり、基本使用料の引き下げにつながる可能性がある。

 加えて、通話時間に連動する費用は「1秒単位の課金」と定義した。通話料はこれまで「30秒20円」のサービスが大半だったが、今後は「10秒数円」や「秒課金」を売りにした新サービスが登場するかもしれない。少なくとも設計の自由度は格段に高まるはずだ。

 さらに驚きは、上記ルールを裁定日から適用すると強引に迫ったことだ。ドコモには新しい卸料金の設定まで6カ月の猶予を与えたが、旧料金と新料金の差分は裁定日まで遡及して精算するとした。裁定は出たものの、新料金がなかなか決まらず、ずるずると先延ばしにならないよう手を打った。

フルMVNOの参入障壁も大きな課題

 総務省は今回、これまで相対契約による自由な料金の設定を認めてきた音声通話サービスにまでメスを入れた。ドコモは「法的根拠がない」「憲法が保障する営業の自由の侵害」などと反論したが、裁定案では「公正競争の促進」「利用者利益の保護」「電気通信の健全な発達」などの観点を挙げ、原価+適正利潤の卸料金での提供が適当と押し通した。

 筆者が次に期待したいのは、「HLR/HSS(加入者管理機能)」の連携に当たって必要な費用の引き下げである。MVNOがHLR/HSSを保有できれば、「フルMVNO」として独自SIMの発行などによる事業拡大の余地が高まる。だが、現状では網改造費用などの負担が大きな障壁となっており、インターネットイニシアティブ(IIJ)をはじめ、ごく一部の参入にとどまっている。

 フルMVNOを目指すMVNOは、HLR/HSS連携機能を原価+適正利潤の卸料金で提供することを求め、日本通信のように総務大臣裁定を申請してはどうだろうか。