楽天グループの2022年12月期連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益が前の期比14.6%増の1兆9278億円、営業損益が3638億円の赤字だった。営業損益の赤字は前の期の1947億円から大幅に拡大した。携帯電話事業などで構成する「モバイルセグメント」の営業損益が4928億円の赤字で、全体の足を引っ張る状況が続く。
同社の命運を握る楽天モバイルの置かれた状況は厳しい。今期(2023年12月期)も設備投資の負担は重く、基地局整備などに3000億円を見込む。足元の契約数は「0円プラン」廃止で3四半期連続の純減となっている。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は決算説明会で2023年末までに月当たり150億円のコスト削減を図るなどと説明したが、「2023年中の単月黒字化」の達成は至難の業である。
一気に減らなかったローミング利用料
改めて振り返ると、三木谷会長は2022年5月の決算説明会で「(モバイルセグメントの赤字は)この四半期(2022年1~3月期)がボトムで改善のシナリオが見えてきた」と胸を張っていた。実際、宣言通りに四半期ごとの営業損失は改善傾向にあるが、そのスピードは遅い。
楽天モバイルにとって誤算だったのは、基地局整備の前倒しで提供エリアを急速に拡大したにもかかわらず、KDDIに支払っているローミング利用料を一気に減らせなかったことではないか。この状況はKDDIの決算からもうかがえる。KDDIは楽天モバイルからのローミング収入の減少影響を2023年3月期で500億円と見込んでいるが、2022年4~12月期累計で200億円にとどまる。
楽天モバイルは2022年3月末で原則終了としていた千葉県と神奈川県におけるローミングを延長した。同社は携帯電話がつながりやすい「プラチナバンド」を保有しておらず、つながりにくい「エリアの穴」がどうしても残ってローミングを切るに切れない状況に陥っている可能性がある。
KDDIは楽天モバイルへのローミング提供に当たり、利用がさほどなかった場合に備え、定額(基本料金に相当)+従量の卸料金を設定したとされる。楽天モバイルはローミングエリアのデータ使用量について全体の5%未満としているが、従量部分は減っても定額部分の負担が重くのしかかっているというオチも考えられそうだ。KDDIのローミングの更新タイミングは4月と10月の年2回。次の更新を受け、楽天モバイルの2023年4~6月期や7~9月期の決算でどれだけの改善効果が出るか注目となる。