楽天モバイルが2020年4月に携帯電話の商用サービスをいよいよ本格展開する。楽天は2019年12月末時点で1億1100万件超の会員ID数を誇る。これだけ強力な顧客基盤があればスタートダッシュは約束されたようなものだ。
様々な調査結果を見ても楽天モバイルへの期待は大きいようだ。例えば総務省が2019年9月に実施したインターネット調査(有効回答数は6001人)。携帯電話会社の「乗り換えを検討中」「今後乗り換える可能性がある」と回答した1896人に移行先を聞いた結果、楽天モバイルが他社を20ポイント前後引き離し、27.5%のトップだった。
ただ楽天モバイルが契約数を急速に伸ばし、既存大手3社と肩を並べる状況になるかといえばかなり疑問である。
半数は乗り換えに興味なし?
総務省は2019年10月施行の改正電気通信事業法で違約金の上限を1000円に設定し、期間拘束の有無による料金差を月170円までとした。長期利用割引も携帯電話料金の1カ月分(年間当たり)に制限し、携帯電話会社を乗り換えやすい環境を整備した。
だが蓋を開けてみれば、顧客の流動性はむしろ落ち込み、大手3社の2019年10~12月期の解約率は上がるどころか下がる結果となった。NTTドコモは前年同期比0.10ポイント減の0.47%、KDDI(au)は同0.11ポイント減の0.61%、ソフトバンクは同0.17ポイント減の0.86%といった具合だ。かつてない低水準となっている。
NTTドコモ | KDDI(au) | ソフトバンク | ||
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2018年 | 10~12月期 | 0.57% | 0.72% | 1.03% |
2019年 | 1~3月期 | 0.61% | 0.98% | 1.27% |
4~6月期 | 0.58% | 0.75% | 1.03% | |
7~9月期 | 0.55% | 0.77% | 0.98% | |
10~12月期 | 0.47% | 0.61% | 0.86% |
楽天モバイルの本格展開が遅れたとはいえ、携帯電話会社を乗り換えやすくなったので格安スマホへの移行がもっと進んでもよさそうである。でも、そうはならなかった。消費増税をはじめ、複合的な要因が考えられるため断言はできないが、やはり端末購入補助を封じた影響が大きいのではないか。結局、「消費者は端末の大幅な値引きというきっかけがない限り、なかなか乗り換えを検討しない」ということなのかもしれない。この仮説が正しければ、楽天モバイルも顧客の獲得に苦労することになる。