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 スマートフォンなどの携帯電話を不適切に販売したとして、総務省が2020年3月6日に行政指導をした。報道発表は2件あり、1件は携帯電話の販売を手掛けるALL CONNECT CCとUQコミュニケーションズに対する指導、もう1件はKDDI(au)と同社販売代理店26社に対する指導だ。

 興味深いのは前者のALL CONNECT CCが悪質な違反に対し、後者の販売代理店26社は店舗スタッフの勘違いや認識不足に起因した違反だったことである。似たような勘違いや認識不足はドコモショップでも判明しており、NTTドコモと同社販売代理店に対しても近いうちに指導が出るとみられる。

 ご存じの通り、2019年10月1日施行の改正電気通信事業法で携帯電話の端末代金と通信料金の完全分離が義務化された。もともと端末の値引きを巡っては「条件が複雑で分かりにくい」との声が多く、ルールが決まってから適用までの期間も短かった。案の定、違反事例が続出した格好だ。

厳格な運用を目指して複雑に

 関係者によると、発端は販売代理店最大手のティーガイアが実施した社内調査だった。改正電気通信事業法に違反した値引きが見つかり、同社が自主的に総務省に報告。総務省は同様の違反事例がないかKDDIに調査を要請し、明らかになったのが冒頭の26社という。違反件数は合計364件に達した。

 端末代金と通信料金の完全分離により、端末の値引きは最大2万円となった。にもかかわらず最大3万5000円の値引きキャンペーンを展開していたALL CONNECT CC(判明した違反は3万2000円の値引きなど)は論外として、確かに新ルールには販売代理店にとって分かりにくい要素が多い。

 例えば携帯電話事業者が同一機種に複数の価格を設定していた場合、最も高い価格が基準となる。端末の「頭金」を設定していない店舗でこの点を考慮せず、2万円の上限を超えて値引きしていたケースがあった。

 端末の値引きに限らず、ポイントや商品券、クーポンの付与なども全て「利益の提供」と見なされる。抽選で付与の場合も当選確率に関係なく、当選時に得られる最も高い利益が基準となる。改正電気通信事業法の施行直後は「法令違反が怖いので利益の提供に当てはまりそうなことは極力控えている。本来は提供して構わない利益も削ってしまっているかもしれない」という店舗があったほどだ。

 さらに利益の提供元が携帯電話事業者や販売代理店など複数に分かれる場合は合計額で判断する。今回の違反事例でもKDDIが端末補償サービスで付与していたポイントの存在を考慮せず、販売代理店が別の利益を提供した結果、2万円の上限を超えてしまったケースがあった。

 一方、3G端末からの乗り換えや一定条件を満たした在庫端末の購入をはじめ、2万円の上限を超える利益の提供が認められる例外規定もある。今回の違反事例にはこの点を誤認して過度の利益を提供していたケースがあった。