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 携帯大手で中古iPhoneを販売する動きが進んでいる。KDDIは他社に先駆けて以前から「au Certified」の名称で展開していたが、ソフトバンクが「SoftBank Certified」の名称で2022年1月19日から、NTTドコモも「docomo Certified」の名称で2022年3月23日から提供を始めた。スマホ購入時のユーザーの選択肢が広がり、中古スマホ市場の拡大につながりそうだ。

NTTドコモが2022年3月23日にオンラインショップ限定で始めた「docomo Certified」
NTTドコモが2022年3月23日にオンラインショップ限定で始めた「docomo Certified」
(出所:NTTドコモ)
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現状はオンラインショップ限定

 もともと携帯大手は、各社がそれぞれ提供している「下取りプログラム」を通じて大量の中古スマホが手に入る。かつては、こうして携帯大手に集まった中古スマホが「協力会社などを通じて海外へ転売されるため、国内市場に流通しない」として、中古スマホの販売会社から不満の声も出ていた。この状況が変わりつつあり、ついには携帯大手自らも中古スマホの販売に乗り出した。

 ドコモは提供の狙いについて「中古スマホ市場の拡大や世の中のSDGs(持続可能な開発目標)への意識の高まりを捉えた」と説明する。ソフトバンクは「中古スマホ市場の盛り上がりを受け、我々にもチャンスがあると判断して提供に至った」としつつ、「単に端末を売るだけでなくプラスアルファで回線契約も獲得できるかがチャレンジ」と本音を漏らす。SoftBank Certifiedでは他社からの乗り換えを条件に端末販売価格を最大2万1600円割り引くキャンペーンなども展開している。収益の最大化という観点では新品の販売に越したことはないのだが、あの手この手で回線獲得の機会を狙っている。

 残念なのは、携帯大手3社とも現状では中古スマホの販売をオンラインショップに限定していることだ。各社とも全国に2000店舗以上ある携帯ショップへ中古スマホを配備するのは難しいのかもしれないが、中古スマホだからこそ現物を確認したいとするユーザーは多いはずである。各社は「クリーニング済み」「厳しい検査をクリア」「バッテリー最大容量は80%以上」「(一定期間は)無償交換に対応」などとうたっているが、ユーザーはどう反応するだろうか。

 一方、中古スマホの販売会社にとっては脅威となる。「SIMロックの原則禁止」などで中古スマホ市場がようやく活気づいてきたタイミングであり、携帯大手に顧客を根こそぎ奪われることにつながりかねない。

 ただ中古スマホの販売会社の中には携帯大手の参入を歓迎する向きもある。ニューズドテックの粟津浜一社長は「中古スマホに対しては『品質が悪い』『バッテリーの持ちが悪い』などのネガティブなイメージが強く、ネームバリューやブランド力がある携帯大手の参入で中古スマホの選択が増える可能性がある。確かに顧客を奪われる側面はあるが、市場の拡大につながるのでポジティブに捉えている」と話す。