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 スマートフォンなどの対応周波数問題に関する議論が総務省の有識者会議で本格化してきた。対応周波数問題とは、SIMロックを解除した端末でも周波数が移行先の携帯電話事業者に対応していなければ乗り換えられない、または快適に利用できない問題を指す。ユーザーの乗り換え障壁となるため、「主要周波数への対応を義務付けるべきだ」といった強硬な意見が出ている。

あくまで端末メーカーの判断

 米Apple(アップル)のiPhoneは国内携帯各社の周波数に対応していることはご存じの通り。問題はAndroid端末だ。総務省の調査結果によると、Android端末はどのメーカーも対応周波数にばらつきがある。ほとんどの端末は1.7ギガヘルツ帯と2ギガヘルツ帯に対応しているので全く利用できないといった事態は避けられそうだが、電波が回り込んで届きやすい「プラチナバンド」と呼ばれる700メガ~900メガヘルツ帯に関しては他社周波数に対応していない端末も目立つ。プラチナバンドを欠いた状態で乗り換えれば「つながりが悪い」「通信速度が遅い」といった事態も考えられそうである。

端末の対応周波数の状況。1.7ギガヘルツ帯と2ギガヘルツ帯にはほぼ対応しているが、700メガ~900メガヘルツ帯への対応でばらつきがある
端末の対応周波数の状況。1.7ギガヘルツ帯と2ギガヘルツ帯にはほぼ対応しているが、700メガ~900メガヘルツ帯への対応でばらつきがある
(出所:総務省)
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端末の対応周波数の状況(続き)
端末の対応周波数の状況(続き)
(出所:総務省)
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 こうした状況に対して「SIMロックを解除しても他社で使いにくいようにわざと非対応にしているのではないか」と疑う向きもあるが、携帯大手は以前から完全否定している。総務省の有識者会議が2022年4月11日に開いた公開ヒアリングでも、楽天モバイルを含む携帯4社が「対応周波数は端末メーカーが決めており、制限を依頼することもない」との回答だった。

 興味深かったのはNTTドコモの説明である。他社の周波数にも広く対応した端末のデメリットとして「iPhoneのように複数の事業者の周波数に対応することを前提とした設計の場合、周波数の組み合わせなどにより、キャリアアグリゲーションやMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)などの高速通信に対応せず、対応端末に比べて通信速度が下回る可能性がある」「端末価格の上昇やきょう体が大きくなるなど商品性が低下する可能性がある」といった点を挙げた。この裏返しではあるが、自社の周波数を中心に対応した端末のメリットは「各社独自の周波数や組み合わせに対応することで、安定的かつ高速通信を享受できる可能性がある」とした。ドコモの本音が漏れ出た格好だ。