携帯電話各社が喉から手が出るほど欲しがる周波数。保有する周波数帯域が多いほど高速・大容量化につながるからだが、総務省が2022年2~3月に募集した2.3ギガヘルツ帯周波数の割り当てにKDDIしか申請しないという珍事があった。KDDIが総務省に提出した「特定基地局の開設計画」によほどの不備がない限り同社へ割り当てられることになり、早ければ5月中旬にも決まる見通しである。
総務省が2021年9~10月に実施した調査では、楽天モバイルを含めた携帯4社が2.3ギガヘルツ帯周波数の割り当てを「希望する」としていた。それにもかかわらず今回申請しなかった理由を各社に聞くと、「当社の考える周波数利用に関する戦略とマッチしないことから見送った」(NTTドコモ)、「今後割り当てが計画されている広帯域を優先すべきだと判断した」(ソフトバンク)といった回答だった。
事業者名 | 理由 |
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NTTドコモ | 2.3ギガヘルツ帯は放送業務や公共業務とのダイナミック周波数共用を前提とした、携帯電話が専有しない周波数となる。携帯電話側の運用制約や割り当て条件を踏まえると、当社の考える周波数利用に関する戦略とマッチしないことから開設計画の申請は行わないこととした |
ソフトバンク | 2.3ギガヘルツ帯は特有の条件を伴ったダイナミック周波数共用帯域であり、当初より一貫して開設計画以外の方式を希望してきた。開設計画による全国帯域としては、今後割り当てが計画されている広帯域を優先すべきだと判断した |
楽天モバイル | 2.3ギガヘルツ帯については社内で様々な検証および検討を行ったが、今回は申請を見送ることとした。詳細については回答を控える |
もともと2.3ギガヘルツ帯周波数を巡っては、運用上の制約が多く「使いにくい」との指摘が多かった。ただ今回の割り当ては、限られた周波数を有効活用していくための「ダイナミック周波数共用技術」を日本で初めて適用する重要な役割を担うことになる。携帯大手には率先して手を上げてほしかった。
手を上げなかったのは抗議の意思?
ダイナミック周波数共用技術とは、同一の周波数を異なる無線システム間で動的に共用する仕組みを指す。2.3ギガヘルツ帯は放送業務や公共業務の用途で既に割り当てられており、新たに割り当てを受けた携帯電話事業者(二次利用者)が活用できる場所と時間帯は限られる。既存免許人(一次利用者)の利用時は停波しなければならない。