全1864文字
PR

 5G(第5世代移動通信システム)の大本命とされるSA(スタンドアローン)方式の導入がいよいよ始まる。NTTドコモやKDDI、ソフトバンクは2021年度中の提供またはトライアル開始を予定している。

 4Gの交換機(EPC)に5Gの基地局がぶら下がる現在のNSA(ノンスタンドアローン)方式に対し、SA方式では5Gの交換機(5GC)と基地局を組み合わせて5G単独で動作する。ユーザーは超高速・大容量だけでなく、超低遅延や多数同時接続などのメリットを享受できるようになる。

 格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)もSA方式による5Gサービスの提供に向け、携帯大手と協議を進めている。しかし、総務省が2021年6月15日に開いた有識者会議でその進捗状況が報告され、あぜんとした。MVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会が要望する提供形態に対し、携帯大手がほぼゼロ回答を示していることが明らかとなったからだ。

全MVNOが1つのスライスを共有

 MVNO委員会によると、SA方式における主な提供形態は、(1)L3接続相当、(2)ライトVMNO、(3)L2接続相当、(4)フルVMNOの4種類。このうち、MVNOが携帯大手と同時期にサービスを提供できそうなのは(1)L3接続相当だけという。ただ、この方式は携帯大手が提供するサービスの単純再販に近く、サービス設計の自由度がほとんどない。

 サービス設計の自由度が比較的高い(2)ライトVMNOの提供時期は2022年度以降。これにはひどい条件が付いている。「携帯大手が開放するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)をモニタリング関連の機能に限定し、すべてのMVNOが1つのスライスを共有する場合」だ。この条件以外の提供時期は見通せないという。

MVNO委員会が総務省の有識者会議で報告した携帯大手との協議状況
MVNO委員会が総務省の有識者会議で報告した携帯大手との協議状況
出所:総務省
[画像のクリックで拡大表示]

 SA方式では同じネットワーク基盤を使いながら品質などの要件に応じてインフラを仮想的に分割する「ネットワークスライシング」が実現できるようになる。携帯大手は同機能を使い、顧客や用途ごとにきめ細かくカスタマイズしたサービス(スライス)を提供する計画だ。それにもかかわらず、MVNOには1つのスライスを共有させるという対応は理解に苦しむ。MVNOは当面、スライシングの恩恵を享受できないことになる。