ソフトバンクが早くもオンライン専用ブランド「LINEMO(ラインモ)」で次なる攻め手を打ってきた。同社が2021年7月15日に提供を始めた「ミニプラン」は月間データ通信量が3ギガバイトで月990円(税込み、以下同じ)。割引を適用しない「素の料金」で1000円を下回ってきたことに驚いた。
割引適用後であれば、これまでも携帯大手のサブブランドで同様の料金はあった。例えば、ワイモバイルで提供する月間データ通信量が3ギガバイトの「シンプルS」。基本料は月2178円だが、光回線などとのセット割引「おうち割 光セット(A)」または「家族割引サービス」の適用で月990円になる(家族割引は2回線目以降が対象)。UQモバイルで提供する同3ギガの「くりこしプランS」も「でんきセット割」の適用により、月1628円の基本料が月990円に下がる。
ただ家族の回線契約を切り替えたり、光回線や電気の契約まで見直したりと手間がかかる。すぐに飛びつく消費者は限られると思っていたが、LINEMOの新料金はこれらの割引を適用せずに月990円である。このインパクトは大きい。
総合力でMVNOを圧倒する可能性
LINEMOの新料金で最も打撃を受けそうなのは、格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)である。MVNOも新料金を打ち出して対抗しているが、ただでさえ安さのメリットが薄まる中、LINEMOの新料金で差はさらに縮まった。
MVNO大手の料金を例に挙げると、インターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJmioモバイルサービス ギガプラン」が2ギガバイトで月858円、NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」が同1ギガで月770円など。とにかく毎月の負担を安く抑えたい消費者に対しては依然として優位性が残るものの、差は月100~200円程度。朝や昼、夕方の混雑時に通信速度が落ちやすいというMVNOの弱点も加味すると、LINEMOのほうが総合力で圧倒する可能性が高い。
携帯大手は一連の料金下げで減収が避けられないため、全体の契約数を少しでも上乗せして影響を最小限に抑えたい考え。LINEMOの新料金はMVNOの潜在顧客ばかりか、既存顧客まで奪い取れるパンチ力がある。決して大げさでなく、筆者には「ソフトバンクが本気でMVNOを潰しにきた」と感じた。