官製値下げにより、2022年3月期の業績で大きな痛手が想定される携帯大手3社。2021年7月30日に他社より一足早く連結決算を発表したKDDIの4~6月期の業績(国際会計基準)は増収増益と至って順調だった。通信料の減収分を非通信領域の成長で見事に補った格好だが、様々な指標を細かく見ていくと苦しさもうかがわせた。
まずは営業利益である。値下げの減益影響は117億円に対し、金融やエネルギーなどで構成するライフデザイン領域の増益効果は90億円にとどまった。法人事業(ビジネスセグメント)に至っては15億円の減益影響で、増益に最も貢献したのが「その他」の126億円だった。金額の内訳は非開示としているが、「その他」にはローミング収入の増加、海底ケーブル修繕引当金やポイント引当金の戻しなどが含まれているという。
同社が2022年3月期の通期で見込む値下げの減収影響は600億~700億円。本格的な影響が出てくるのはこれからになる。法人事業のマイナス影響は一過性のもので順調に成長しているとはいえ、非通信領域の成長で補い切れるのか不安を残した。同社は2022年3月期に700億円のコスト削減も計画するが、2022年3月末に予定する3Gの終了と顧客の移し替え(巻き取り)によるコスト増加で相殺される見通し。コスト削減の効果は「増益の形では出て来ない」(同社)とした。
ID数が減少し、解約率も上昇
4~6月期は個人向け事業(パーソナルセグメント)の「グループID数」も1~3月期比で12万5000件のマイナスとなった。グループID数とは、auブランドをはじめ、UQモバイル、オンライン専用ブランドのpovo、同社グループ内のMVNO(仮想移動体通信事業者)で保有するID数の合計を指す。主力のau契約数が目減りしてもグループ全体ではID数の増加を保ってきたが、純減に転落した。
主力のau・UQモバイル・povoで構成する「マルチブランド解約率」も4~6月期は0.83%となり、1~3月期の0.76%から悪化した。この数値はau・UQモバイル・povoのブランド間で乗り換えた場合の解約を含まないため、純粋に他社への流出が増えたことを意味する。特に4月は楽天モバイルの1年間無料キャンペーンの終了、携帯大手3社のオンライン専用ブランドの開始直後で流動性が高まった。以降は月を追うごとに改善し、6月は0.6%台に持ち直したとするが、このまま抑え込めるとは限らない。