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 総務省の有識者会議でMNP(モバイル番号ポータビリティー)の見直しに向けた議論が進んでいる。MNPとは、利用中の携帯電話番号を変えることなく携帯電話会社を乗り換えられる同番移行制度のことだ。移行元の携帯電話会社でMNP予約番号を発行してもらい、それを移行先の携帯電話会社に伝えることで実現している。移行元の携帯電話会社が徴収している3000円の手数料の廃止や引き下げ、移行元と移行先の双方で必要となる手続きのワンストップ化といった案が出ている。

ワンストップ化は難しい

 前者の手数料については、もともと制度の導入時に「受益者負担」として徴収を認めた経緯がある。MNPは「2006年10月の制度開始から10年以上が経過し、携帯電話の基本的な機能になった」とはいえ、システム運用にはコストがかかる。「利用者に限らず携帯電話会社も恩恵を享受している」としても、一足飛びに手数料なしとするのだろうか。違約金の上限1000円と同様、一定の徴収は認めるのが妥当な気がしている。

 もっとも楽天モバイルによれば、OECD(経済協力開発機構)加盟国の8割は利用者負担なしという。手数料廃止の決着も十分に考えられそうだ。

 むしろ筆者が注目しているのは後者のワンストップ化のほうだ。移行先の携帯電話会社における手続きだけでMNPまで完結すれば非常に便利である。移行元の携帯電話会社からもしつこく引き留められずに済む。携帯電話会社の乗り換え促進という観点では、手数料よりもこちらのほうが効果が大きいのではないだろうか。ワンストップ化が実現すれば、移転元による手数料廃止も自然に思えてくる。

 だが、携帯大手は強く反発している。ワンストップ化されると、解約時の不利益事項を十分に説明できずトラブルにつながりかねないからだ。「解約後も料金の請求が継続している」「一緒に契約していた別回線の料金が急に高くなった」「違約金の発生期間に解約してしまった」といった例が想定されるという。これらを含めてうまく処理してほしいと思うかもしれないが、料金滞納のような信用情報も関係してくるため、携帯電話会社間で契約情報を丸ごと共有するわけにはいかない。システムの見直しも必要になるため、仮に導入するとしても相当に時間がかかる見通しである。